注目の「サステナブルファッション」 ハイブランドやファストファッションがSDGsに取り組む理由とは?

注目の「サステナブルファッション」 ハイブランドやファストファッションがSDGsに取り組む理由とは?

「SDGs」や「持続可能な社会」というキーワードがよく聞かれるこの頃。誰もが知るハイブランドや気軽に購入できるファストファッションなど、ファッション業界もまた「SDGs」を積極的に推進しはじめているのをご存じですか?今回は、ファッション業界におけるサステナブルな取り組みをご紹介します。

「サステナブルファッション」とは?

サステナブルファッションとは、衣料品の生産から廃棄までのサイクルが将来を通して持続可能であることを目指す取り組みです。

ファッションに限らず、環境に配慮した取り組みが世界的に活発になっています。私たち消費者の意識も変化しており、豊島株式売社が実施したファッションに関するアンケートでは、3人に1人が「ファッションの環境配慮の意識が高まっている」と回答しています

ところで、「サステナブル」という言葉が使われだしたきっかけは、2015年の国連サミットで採択された「SDGs:Sustainable Development Goals(持続的な開発目標)」です。SDGsは、環境・差別・貧困など、あらゆる社会課題を含んだ17の項目が盛り込まれており、それらは2030年までに達成すべきゴールとされています。

SDGsの特徴として挙げられるのが、これらの課題解決と経済発展を同時に達成することを掲げている点です。基本的な考え方は、今の便利な生活を手放したり、我慢したりするのではなく、環境を守りながら新しい技術や工夫で経済成長を推し進めていこうというものです。

また、政府だけでなく、企業や各個人にもSDGsの目標達成のために環境に配慮した活動が求められています。これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄の産業モデルでは、人類と自然の共存は限界に達するとされています。そこで、世界各国の企業が持続可能な社会の仕組みづくりとして「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」を推進しているのです。

*参考:ファッションの環境意識調査(豊島株式会社、2021年

ファッション業界は「世界第2位の汚染産業」?

国連貿易開発会議(2019年)において、ファッション業界は世界第2位の汚染産業と指摘されました。ファッション産業は、世界のCO2排出量の8%を占め、アジアを中心に大量の水と化石燃料を燃やし、繊維や衣料品の生産をつづけています。

環境省の試算によれば、驚くべきことに、一着の衣料品を製造するのに必要な水はバスタブに換算すると11杯分(約2,300リットル)で、排出されるCO2はペットボトル255本分(25.5kg)にもなります衣料品の原料となる綿などの天然繊維は、収穫までの過程で多くの水が使用されています。綿花栽培はもともと水資源の乏しいインドや中央アジアで行われているため、周囲への影響は無視できない現状となっています。

例えば、中央アジア西部のアラル海では、綿花栽培による大量の水が使われたために、湖が干上がってしまいました。また、環境保全団体のWWFによると、 綿花は世界で最も殺虫剤が使用されている農作物とされ、大量の殺虫剤の使用による生産者の健康被害が問題になっています。

大量の殺虫剤が人体に影響を与え、めまい・けん怠感・吐き気・口内のマヒの症状を引き起こします。長期的な影響としては、発がん性や先天的な奇形も懸念されています。

そのような状況の中、衣類の生産量はここ十数年で2倍に増えています。これは、衣料品が過剰に生産され、1シーズンや数年という短いライフサイクルで生産と廃棄を繰り返した結果といえるでしょう。そして、不要となった衣類の68%はごみとして焼却されるか、埋め立てられているのです。

*参考:国際連合広報センター環境省WWF

サーキュラー・エコノミーは従来の3Rとはなにが違う?

古着を利用する、不要になった洋服を誰かに譲る、捨てる際には分別して資源ごみに出すなどの「3R=リデュース・リユース・リサイクル」は、いまでも盛んに行われています。

3Rという仕組みにおいて、日本は世界でも先進的な立場をとってきました。しかしながら、「サーキュラー・エコノミー」の仕組みでは、日本は世界に比べて遅れをとっていると言われています。

それでは、「3R」と「サーキュラー・エコノミー」は何が違うのでしょうか。サーキュラー・エコノミーは、製品の設計・製造段階から、廃棄物・汚染を限りなく最小限にすることを基本的なコンセプトとしています。

一方で、3Rとは大量生産・大量消費・大量廃棄の延長戦上でしかないため、資源を大量に消費する前提の仕組みでは、持続可能な社会は実現できないのです。ファッション業界において地球上の限られた資源を無駄なく有効活用するために、天然繊維を原材料に戻して再び再生繊維として使用し、循環させなくてはなりません。

とはいえ、天然繊維などの再生繊維には限界があります。再生繊維を繰り返し使用するごとに繊維は劣化するため、新たに繊維を追加したり、椅子などの中材や断熱材としたりするなどの方法があります。そして、最終的には天然繊維はたい肥として自然に還っていくことになります。

しかしながら、化学繊維は自然に還っていくことはありません。そのため、焼却・埋め立てや海洋投棄によって、周辺の生態系に悪影響を与えています。つまり、サーキュラー・エコノミーの観点でいえば、化学繊維は一度つくってしまうと、それを半永久的に再生し、循環させていかなければなりません。

持続的な社会を実現するために、資源をできるだけ取りこぼすことなく「循環」させる「サーキュラー・エコノミー」の重要性が高まっています。

ファッションブランドの取り組み

「環境の破壊者」というレッテルを貼られてしまったファッション業界ですが、その状況を打開すべく、ハイブランドからファストファッションまで各社が様々な取り組みを行っています。

特に、ファストファッションは、わずか数週間でトレンドが切り替わるために短いサイクルで大量生産を行います。また、子育て世代は子ども服だけでなく、社会的立場、家庭における役割の変化などから2〜3年で衣服の買い替え時期を迎えます。とはいえ、生活の必需品である衣料品を楽しめず、購入しづらくなるのは避けたいところです。そこで、ファストファッションもサステナブルな取り組みを始めています。

グッチ

グッチは製品の環境負荷値を数値化する「EP&L」という独自の環境損益計算を開発し、全ての製品における環境の負荷を数値で可視化しました。

また、ブランドの顔ともいえる革製品では「スクラップレスレザー」プロジェクトを進めています。有害な化学物質であるクロム化合物の使用を中止。皮革を効率よくカットすることで無駄をなくすなどの取り組みによって、これまでに約137トンのレザーくずの削減、それによって約2,100万リットルの水の消費量の削減、CO2の排出を約12,353トンの削減を達成しました。

そのほか廃棄された漁獲用の網など海洋ごみを回収し、リサイクルした再生ナイロンを使用するなどの取り組みを行っています。これらの取り組みによって、グッチの親会社であるケリング・グループは「世界で最も持続可能な企業100社」のうち、2位にランクインしました(2019年)。

*参考:スクラップレスレザー

ユニクロ / UNIQLO

ユニクロの親会社であるファーストリテイリングは、日本企業ではいち早く「ファッション業界気候行動憲章」に参加しました。ファッション業界気候行動憲章とは、2030年までにサプライチェーンも含めたCO2やメタンの排出量を合計30%カットすることなどが盛り込まれたものです。さらに同憲章では、2050年までにCO2の排出を実質0にすることが目標に掲げられています。

ユニクロの具体的な取り組みとしては、素材生産時のエネルギー消費を10%削減するプログラムや店舗の証明をLEDに変更するなどの省エネ対策を実施。結果として、19%のエネルギー消費を削減しました(2018年時点)。エネルギー消費削減以外にも、デニム製造時の水の使用量の最大99%カットにも成功しています。そのほか、自社製品の着られなくなったダウンを回収し、独自のテクノロジーによってダウンとフェザーを100%リサイクルすることを目標としています。

*参考:ファーストリテイリングがファッション業界気候行動憲章に署名BLUE CYCLE JEANS:ジーンズを、地球品質へ。ユニクロダウンリサイクル

H&M

スウェーデンのファストファッションブランドであるH&Mは、インドネシアの島に流れ着く海洋ごみを回収し、ペットボトルをリサイクルして再生ポリエステルとして使用しています。他にも、廃棄される「ぶどうくず」をグレープレザーというバイオプラスチックに変える技術を支援するなど、先進技術への投資へも積極的です。

*参考:HM.com  サステナビリティ

私たちにもできるサステナブルファッションの取り組み

サステナブルファッションを扱うブランドの商品を購入することで、環境へ貢献することもひとつの方法です。ここでは、商品を購入するだけではない、私たちにもできるサステナブルファッションの取り組みをご紹介します。

衣料品サブスクリプションサービス

衣料品のレンタルは古くからあったサービスですが、冠婚葬祭など限られたシチュエーションの利用が一般的でした。しかし、より日常に寄り添ったサブスクリプションサービスが始まっています。

「airCloset」は日本初・国内最大級の女性向け普段着に特化したファッションレンタルサービスです。同サービスのように新しい洋服を継続的にレンタルする(サブスクリプション)ことで、洋服が無駄に捨てられることがなく、着たいと思ったときに好きなファッションを楽しむことができます。

プロのスタイリストにコーディネートしてもらい、新しいファッションにチャレンジするサービスも提供されています。衣服だけでなく、すぐサイズアウトしてしまう子どもの靴も、まだ履けるうちに新しいものを購入しなくてはならないのはもったいなく感じてしまいます。 

ナイキでは、子ども用スニーカーのサブスクリプションサービスが始まっています。まだアメリカのみでの展開ですが、日本でもサービスの開始が待たれます。

*参考:airClosetWhy Nike’s First Sneaker Club for Kids is a Parent’s Best Friend

フリマアプリを利用する

最近は、不要になった衣料品をフリマアプリなどを介して必要な人に販売することが身近になっています。新しく購入せず、欲しい時に必要な物を手に入れられるようになりました。このようなシェアリングサービスはさまざまな分野で始まっており、環境負荷の少ない消費行動のひとつといえるでしょう。

持続可能なファッションを目指すために

今回は、サステナブルファッション、サーキュラー・エコノミーの仕組み、ブランドの取り組みをご紹介しました。そして、私たち消費者は、行った活動だけでなくその結果までみていく必要があるようです。

例えば、アフリカへ過剰に寄付された衣類が現地で大量の廃棄物となる問題が起こっています。年間20億着がアフリカに寄付されているということですが、実際に寄付されたものは、その土地の気候にあわない、カビや破損で使えない、といった理由で捨てられているのです。

誰かの役に立つと思ったことが結局無駄になってしまうのは、とても残念なことです。私たちが行った活動が、最終的に支援を求めている人たちに届き、役立っているのかが見えるような仕組みも求められています。

SDGsの目標のひとつである「つくる責任、つかう責任」。この達成のために私たちができることを、今いちど考えてみるのが大切ではないでしょうか。

くらだしマガジン編集部

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