4月15日~5月14日は国が「みどりの月間」と定め、自然への理解と関心を深めるために、さまざまなイベントが行われているのをご存じでしょうか?自治体や国が開催するイベントは基本的に無料で参加でき、普段は入場料を払っている国営・県営の公園や庭園も「みどりの日」は無料で入場できるところが多くあります。
今回は「みどりの月間」をテーマに、そもそも自然環境を保護すべき理由からみどりの月間に行われるイベントまでをご紹介します。
4月15日からはじまる「みどりの月間」とは?
「みどりの月間」とは、5月4日の「みどりの日」とも関連して、自然に親しみながら理解と関心を深める期間のことです。ちなみに、みどりの日は「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心を育む」ことを目的に制定された祝日をいいます。みどりの月間は2006年に創設が閣議決定され、2007年から開始しました。1990年から2006年までは「みどりの週間」が存在していましたが、毎年4月15日~5月14日のみどりの月間が設けられたことで、廃止されました。
この期間中は、全国各地で自然とのふれあいや環境保護、緑化に関するさまざまなイベントが開かれています。
「みどり」を守らないと、何が起きるの?
「みどりの月間」のように豊かな自然を守ろうとする活動がある一方で、私たちの社会にはいまだゴミ問題やCO2排出、プラスチック製品の大量使用など、環境破壊につながるさまざまな課題も抱えています。
もし、このまま私たちがアクションを起こさず、「みどり」を守らなかったとしたら、一体どのようなことが起きるのでしょうか。
環境破壊が新たな感染症をひきおこす?
環境破壊によって引き起こされるものとして、最近声高に言われているのが「新たな感染症の発生」です。環境省の『環境白書』によれば、土地利用の変化で生物多様性が失われたり、気候変動などにより地球環境が変化したりすることで、新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症が発生する可能性があると言及しています。
また、2020年10月に発表された『生物多様性とパンデミックに関するワークショップ報告書』では、およそ170万個ある未知のウイルスのうち54~85万個が人間に感染する可能性があること、1960年以降に報告されている新興感染症の30%以上は、森林の伐採、野生動物生息地での人間の定住、作物や家畜の生産量増加、都市化などの環境変化が原因となっていることを指摘しています。
人間が行っている環境破壊。生物多様性が失われることで、これまで人間の世界にいなかったウイルスや宿主となる動物が人間の世界に現れやすくなり、未知のウイルスの感染が広がっていくのです。「みどり」を守るということは、実は新しい感染症を予防する観点からも重要なことだといえます。
北極圏で気温38度を記録。国内外の深刻な気候変動
国内外の気候変動も深刻化しています。それにより、さまざまな自然災害も発生しています。例えば、世界では北極圏で観測史上最高の気温38度を観測したり、アメリカでも過去80年間の観測で最高の気温である54.4度を記録したりと、いわゆる「異常気象」を観測することが増えてきました。あまりにも高温が続いたことで、アメリカ西部で大規模火災が起きたことは記憶に新しいのではないでしょうか。
国内でも2020年の平均気温は、1898年の統計開始から最高値を記録しています。サイクロンや台風も近年非常に強くなっており、家の損壊や川の氾濫などの災害も多発。豪雨災害や干ばつなど、近年の気候変動が原因とみられるさまざまな災害が起きている現状があります。
私たちの生産活動や消費行動が環境を破壊し、気候や生態系に影響を与えてしまっています。持続可能的な社会を実現するために、ひとりひとりが環境に配慮する行動が求められています。
*参考:環境省
「みどりの月間」で開催される、さまざまなイベント
環境保全のための行動が必要だと分かったものの、何から取り組むべきか分からないという方は、まずは身近な自然環境について考えるきっかけとなるイベントに参加してみてはいかがでしょうか。
ここからは「みどりの月間」で開催されるさまざまなイベントを2種類、ご紹介します。
政府主催で開催するもの
みどりの月間は政府主催によるさまざまなイベントが実施されます。まず、内閣府では「みどりの式典」を開催。国内で植物や森林、緑地、造園、自然保護などに関する研究や技術開発で功績をあげた個人に内閣総理大臣が「みどりの学術賞」を授与しています。第16回となる今回は、2022年4月18日にパレスホテル東京にて式典が開催され、約160名が参加しました。2022年の学術賞は京都大学、龍谷大学より2名の研究者が受賞しました。
今回受賞した岡田清孝氏は、現在、植物遺伝子研究においてモデル植物となっているシロイヌナズナを国内でいち早く実験材料として研究を行った第一人者。岡野氏の研究成果によって、イネや大豆、トマトなどの農作物の成長メカニズムや生産性向上に関する研究に寄与しました。
同じく受賞した北島薫氏は、熱帯林では多様な種類の植物が共生していることに着目して、生態系を維持するメカニズムを説明するモデルを提唱。このモデルを使い地球温暖化と関連する炭素収支シュミレーションの精度が向上しました。
また、環境省も自然環境功労者環境大臣表彰を行っており、個人や学校、NPO法人などの多様な人が受賞しています。
さらに、国土緑化機構による「緑の募金」の全国一斉強調月間が行われるほか、みどりの月間を締めくくるイベントとして、最終日には「みどりの感謝祭」も行われます。2022年は5月14日・15日の2日間にわたって木場公園で開催し、誰でも無料で参加可能です。
全国から自治体や団体、企業、NPO法人などが多数参加。日本植木協会による「こけ玉作り」や、アサヒグループジャパン アサヒの森環境保全事務所による「間伐材をつかった植木鉢づくり」、花あそび~花寿庵~による「フラワーセラピー体験」など、親子で楽しみながら、貴重な体験ができるさまざまなイベントが開催されています。
全国各地で開催されるもの
全国各地の自治体や国立公園などでも、イベントが開催されます。
例えば、京都府宇治市では「2022宇治市花と緑のキャンペーン」を開催。緑のウォークラリーをはじめ、ふれあいコンサートや野鳥観察会、マルシェなどが開かれる予定です。
また、国が管轄する公園や庭園の多くで「みどりの日」を中心に入園無料となります。入園無料を実施する公園や庭園はこちらの通りです。
<「みどりの日」に入園無料を実施する公園・庭園>
北海道 |
北海道大学植物園、国営滝野すずらん丘陵公園 |
宮城県 |
仙台市野草園、秋保大滝植物園 |
茨城県 |
筑波実験植物園 |
東京都 |
上野動物園、多摩動物公園、井の頭自然文化園、葛西臨海水族園、神代植物公園、夢の島熱帯植物館、新宿御苑、浜離宮恩賜庭園、旧岩崎邸庭園、旧芝離宮恩賜庭園、旧古河庭園、清澄庭園、小石川後楽園、殿ヶ谷庭園、向島百花園、六義園、小石川植物園、国立科学博物館附属自然教育園、森林総合研究所多摩森林科学園 |
神奈川県 |
小田原フラワーガーデン |
新潟県 |
国営越後丘陵公園 |
広島県 |
広島市植物公園 |
福岡県 |
福岡市動植物園 |
佐賀県 |
国営吉野ヶ里歴史公園 |
※2022年4月16日現在の情報です
ここに記載した以外にも、「みどりの月間」「みどりの日」にちなんださまざまなイベントやキャンペーンが全国各地で開催されています。自宅近くのイベントを調べて参加してみてはいかがでしょうか?
自然環境をまもり、次世代に受け継いでいくために
日本は世界の中でも非常に自然が豊かな国ですが、この自然環境は当たり前に存在するものではありません。私たちが大切にまもっていかなければ、たったひとつの行動で、簡単に破壊されてしまいます。
豊かな自然環境を守るためには、フードロス、マイクロプラスチック、CO2による温暖化など、解決すべき課題がたくさんあります。
「みどりの月間」をきっかけに、身近な自然に触れて感謝する時間を持ち、どうしたら次世代にこの環境を受け継いでいけるのかを考えてみてはいかがでしょうか?