サステナブルや環境について関心が高まっている近年、家庭で出る生ごみや落ち葉を堆肥にするコンポストが注目されています。
堆肥は、野菜や花が育つ良質な土をつくるのに欠かせないもの。自宅で家庭菜園やガーデニングに使ったり、必要としている自治体や地域農園に提供したりするなど、堆肥の活用方法は様々です。
今回は、誰でも簡単にできるコンポストの作り方や堆肥の具体的な活用方法、すぐに実践してみたくなるおしゃれなコンポスト容器をご紹介します。
日本のごみ焼却率は世界一。コンポストが必要な理由とは
日本は世界でも多くごみを焼却している国です。2017年には焼却処理されるごみの量が約3,300万トンに上り、アメリカを超え世界で最も多い国となっています。
私たちはごみを燃やして処理をすることが当たり前と思いがちですが、環境先進国が多い欧米では、堆肥にできるもの・できないもので分別することが主流になっており、循環型社会の実現に向けて取り組みが進んでいます。
日本の焼却処理における環境技術では世界的にも高水準であるとはいえ、際限なく焼却していいことではありません。また、プラスチックや金属などを資源ごみとしての分別は行われていますが、生ゴミを資源ごみとして活用することは積極的ではないといえます。
実際に日本で排出される「燃やせるごみ」の約40%が生ごみです。毎日出る生ごみを堆肥として活用することで、循環型社会に向けた大きなアクションになります。
ここで、コンポストの活用を推奨している自治体があります。徳島県上勝町では、ゼロウェイスト宣言のもと、コンポストの活用やごみの細かな分別により80%以上のリサイクル率を達成しています。
さらに詳しく上勝町や国外の取り組みについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
国内外のゴミを減らす工夫をご紹介!分別に役立つ便利グッズもあわせてチェック
*参考:一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について|環境省,なぜ燃やす?2兆円超、8割が水の生ごみも 焼却ごみ量・焼却炉数ともに世界一の日本|Yahoo!ニュース,ごみ焼却施設が断トツに多い日本の不名誉 分別で家庭の生ごみ資源化を|【SDGs ACTION!】朝日新聞デジタル
コンポストのメリットは?
コンポストを使うことで家計にやさしくなったり心豊かに過ごせたりと様々なメリットが得られます。
栄養豊富な堆肥ができる
生ごみからできた堆肥は、土に混ぜると通気性や保水性を高める効果があり、畑の地力をアップさせてくれます。また、窒素を多く含んでいるので植物の栄養になる肥料としても活躍。堆肥を使用することで元気で美味しい野菜が育ちます。
*参考:「生ごみ堆肥」について|JA京都,「生ごみ堆肥と肥料の組み合わせ方」|財団法人 日本土壌協会 p6-p7
ごみが減ってゴミ袋の節約になる
一般的には「燃えるごみ」のうち40%が生ごみです。コンポストによって生ごみの量を減らすことができれば、ごみが溜まりにくくなり、ゴミ袋を使わず節約することができます。
*参考:ごみ焼却施設が断トツに多い日本の不名誉 分別で家庭の生ごみ資源化を|【SDGs ACTION!】朝日新聞デジタル
自治体の補助が受けられる
コンポスト機器を購入すると費用の一部を補助してくれる自治体もあります。補助の対象や条件については自治体で異なるので、「○○(地域)+コンポスト」で検索して、各市区町村のホームページから確認してみましょう。
サステナブルな活動が日常になる
SDGsに関心はあるけれど行動するのが難しい人も、料理のついでにコンポストがあれば毎日出る生ごみを処理することが習慣に。環境に配慮した生活が送れるようになります。
コンポストの作り方
コンポストの基本的な作り方をご紹介します。
必要なもの
- コンポスト基材(ピートモス3、燻炭2の割合)
- 生ごみ
- コンポスト容器
手順
1.細かくして水気を切ってからコンポストへ
生ごみの野菜などは細かく切り、十分に水気を切ってからコンポストに入れましょう。水が多いままコンポストに入れると悪臭が発生する原因になります。
2.土を上にかぶせる
コンポストに入れた生ごみの上に、コンポスト基材をかぶせてください。基材はホームセンター等で販売されています。基材と生ごみを混ぜてしっとりとする手触りが目安です。
3.中身をかき混ぜる
コンポストの中身を混ぜて堆肥化を促進させます。コンポスト内を混ぜて新鮮な空気を取り込むことで、悪臭をなくす効果も。
4.放置して熟成
混ぜたらそのまま放置。新しい生ごみが出たら手順1~4を繰り返し、コンポストがいっぱいになったら1~2か月放置して熟成させます。
熟成中も、しっとりするくらいの水分を含ませたり半月に1回ほどコンポストをかき混ぜたりすると発酵が進みやすくなります。土のような見た目と匂いになれば堆肥のできあがりです。
コンポスト容器によっては一部の手順を省けるものもあるので、その容器に適した方法で行いましょう。
*参考:放置するだけ♪自作「コンポスト」の作り方と使い方|LOVEGREEN,段ボールコンポストでの作り方
コンポストに入れられるものは?
コンポストのなかには、発酵しやすいものを入れていくことで堆肥化が促されます。
入れていいもの
黒土、落ち葉、病気にかかっていない草花や刈り取った芝、野菜くず、卵の殻、茶葉、コーヒーかす(少量のみ)、牛・豚・鳥のフン
入れてはだめなもの
肉、骨、貝殻、調理された食品、油が多量に含まれたもの、竹の子の皮、石炭や木炭の灰、犬猫や人の糞尿、病気になった植物
発酵しにくい肉や魚などを入れてしまうと、悪臭や虫が寄り付く原因になってしまうので注意が必要です。まずは、野菜や卵の殻、茶葉などから始めてみましょう。
*参考:コンポスト・コンポスターとは?作り方、使い方、価格、注意点まとめ
おしゃれでおすすめのコンポスト5選
ここでは、庭やキッチンで活躍するおしゃれなコンポストを種類別に紹介します。
設置型コンポスト
庭がある方は最も手軽に始められるコンポスト。庭の土を掘り、コンポスターの下の部分を埋め込みます。満タンになったら2~3ヶ月放置して熟成させます。
回転式コンポスト
生ごみや落ち葉などを入れて、容器自体を回転させることで空気を効率よく混ぜ込み、堆肥化させます。毎回スコップで掘り返さなくてもくるくる回転させるだけなので、忙しい方や効率重視の方におすすめ。
密封型コンポスト
密封しているので臭いが気にならないのが魅力的。キッチンにも置けるコンポスト容器です。生ごみが上手に発酵してくると、液体肥料が出てきます。その肥料は植物に撒くことで葉が力強く元気になりますよ。
バッグ型コンポスト
おしゃれで機能的なファスナー仕様のバッグ型。ベランダに置いていてもコンポスト容器と感じさせないスタイリッシュなデザインです。
電動生ゴミ処理機
電気を使い、温風で生ゴミを乾燥させて堆肥化させます。他のコンポストより高価ですが、安心して室内に設置でき手軽に堆肥化できます。
地域の人と堆肥づくり「公共コンポスト」も
地域の人と生ごみを持ち寄って堆肥化させる公共コンポスト。アメリカのボストン市や日本でも広がりをみせ、現在コンポストアドバイザーである鴨志田純さんが全国で推進している取り組みです。地域でつくった堆肥で、地元農家が美味しい野菜を作ることができる好循環を生み出す公共コンポスト。自宅でのコンポストが難しい人は、近所の畑やシェアリングサービスを利用して公共コンポストを始めてみては。
*参考:道端に公共のコンポストを設置 アメリカ・ボストン市が堆肥化プロジェクト始動へ|ELEMINIST,堆肥作りは、料理作り。公共コンポストで地域を“発酵”させるサーキュラーエコノミー|IDEAS FOR GOOD
コンポストづくりで対策したいこと
室外で行うものや密封されていないコンポストでは、時に小さな虫や臭いが気になってしまうことも。そんな気になる問題の対処法をご紹介します。
虫対策:野菜クズを中心に堆肥化する
コンポストに肉や魚など動物性の生ごみを入れないようにすることで虫対策になります。
それでも虫が発生してしまったら、米ぬかや糖分を入れて発酵を促進させ、土の中の温度を上げることで、死滅させることができます。
悪臭対策:水分をしっかり切ってよく混ぜる
生ごみを投入する際に水気をしっかり切り、混ぜ込むときに下から土をよく混ぜることを心がけてください。
臭いが気になる場合は、生ごみの投入を数日やめて、分解を待ってみることで改善されます。
*参考:コンポストとは?やり方、方法、作り方、メリット、デメリット、種類、堆肥、特徴など
つくった堆肥を家庭や地域で活用する方法
完成した堆肥は、自宅で使ったり地域に活用することもできます。様々な堆肥の用途をご紹介します。
家庭菜園、ガーデニングで活用する
堆肥は質の良い土壌にする効果があるので、野菜や花が元気に育ちます。作った堆肥をそのまま使うと濃度が高すぎて植物にとって成長の妨げとなってしまうので、必ず土3、堆肥1の割合で混ぜてから使ってください。
*参考:三豊市
自治体回収サービスを利用する
自治体で生ごみ堆肥を回収しているところもあります。堆肥を提供するとポイントや商品券と交換してくれる自治体も。コンポストの種類によっては回収不可のものもあるので注意してください。持ち込みまたは郵送で対応してくれるので、お住まいの自治体サイトを確認してみましょう。
地域支援型農業に参加する
地域共同農園や農業イベントを開催するなど、循環型社会を目指すコミュニティもあります。そこで自宅でつくった堆肥の回収をしているケースがあるので、定期的にチェックしてみてください。コミュニティに参加することで仲間が増え、サステナブルな意識も高まります。
CSA LOOP
https://www.instagram.com/csaloop/
家庭で使いきれない堆肥を農家へ預け、必要に応じて農家が野菜生産に活用することができるコミュニティです。加えて特定の農家から年間分のお野菜を購入することができます。2022年4月現在、段階的にコミュニティ会員募集をしています。
*参考:CSA LOOP,コミュニケーションの余白を生み出す|都市部の消費と生産をつなぐコミュニティの新たな仕組みが開始 <都内4拠点から開始する、地域コミュニティの会員募集開始>|PR TIMES
eco-wa-ring(エコワリング)
家庭の生ごみで作るたい肥を活用し、市民が農作業を楽しんだり、市内の農園に還元する活動を、川崎市と 企業が支援しながら循環の輪をつくるフードサイクルプログラムです。堆肥を活用したイベントが定期的に開催されるので、気になったものに参加してみてはいかがでしょうか。
*参考:エコワリング川崎
LFCコンポスト
代表が20年NPOとして普及研究活動を経て生まれたのがLFCコンポスト。バッグ型のコンポストを販売している会社ですが、定期的に堆肥の回収&相談会や農業イベントなどを行っています。
*参考:LFCコンポスト
コンポストで家庭からサステナブルを楽しんで
日々大量のごみを焼却処理している日本。世界が循環型社会へ向かおうとしているなか、その当たり前を見直す必要があるかもしれません。
毎日の生ごみを地球にやさしい堆肥に変えることができるコンポスト。サステナブルが難しいと感じる方でも、日々の料理のついでにできるものです。
自宅の植物を育てたり、地域に還元したりできることも魅力の一つ。コンポストで心豊かな生活をはじめてみませんか。