世界には貧困に悩む多くの人がいる一方で、まだ食べられる食料が捨てられているのが実情です。食品ロスを削減できれば、食糧問題だけでなく、処分費用など経済的負担を軽減したり、地球温暖化防止につながったりといったメリットが期待できます。
日本をはじめ世界中で食品ロスを削減する取り組みが行われていますが、実際身の回りでどのような工夫がされているのか知らない人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、食品ロスの原因や食品ロスが問題になっている理由、私たちがよく食品を購入するスーパーではどのように食品ロス削減のための対策をしているかを紹介します。
食品ロスについて知ろう
賞味期限切れやパッケージの印字ミスなどの理由で食べられることがなかった食品ロス。膨大な量の食品が廃棄されることは世界中で問題となっています。
はじめに、どのくらいの食べられる食品が捨てられているのか、食品ロスの現状と要因について紹介します。
食品ロスの現状
日本の食品ロス量は年間522万トン。この量は東京ドーム5つ分に相当し、日本に住む人が毎日お茶碗1杯ずつ食品を廃棄していることになるのです。
また、世界では年間約13億トンもの食品ロスがあり、これは世界の食品生産量の3分の1に相当する膨大な量です。
一方で、世界では多くの人が貧困や飢餓で苦しんでいます。栄養不足で苦しむ人たちに対して、世界では年間約440万トンほどの食糧支援が行われています。しかし、日本だけでもこの1.2倍もの食べられる食品が捨てられているのです。
では、なぜこれだけの量の食品ロスが発生してしまうのでしょうか。食品ロスが起こる要因を見ていきましょう。
食品ロスの4つの要因
食品ロスの主な要因には、次の4つが挙げられます。
- 家庭や外食での食べ残し
- 規格外商品の廃棄
- スーパーでの売れ残り
- 賞味期限や消費期限切れの商品の廃棄
食品ロスは家庭と企業の双方で発生します。家庭での食品ロスは、冷蔵庫に入れたまま消費期限を過ぎてしまったり、一度に多くの食品を買いすぎて使いきれなかったりすることが要因です。
企業の食品ロスは生産や輸送の過程で起きるパッケージの破損や販売期限切れなどが主な要因になっています。
食品ロスはなぜ問題?
まだ食べられる食品が捨てられることは、単純に「もったいない」だけでなく多くの問題を抱えています。食品ロスが招く3つの問題を見ていきましょう。
生産・廃棄にコストがかかる
賞味期限切れなどで廃棄される食品も、生産されるまでに材料費や人件費などさまざまな費用がかかっています。食品ロスを発生させることは、これらの費用を無駄にすることになるのです。
また、食品を処分する過程でも処分費用が必要になります。
日本で年間に処分されるごみ(一般廃棄物)の処理費用は2兆円を超えています。これらには食品ロス以外のごみが含まれていますが、年間16,500円ほどを国民全員が支払っている計算になるのです。(参考:農林水産省|食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢)
食品ロスへの意識を高め廃棄する量を減らせれば、生産にかかる手間や時間、廃棄処分に使われる税金を他にあてることもできるでしょう。
地球温暖化が進む
世界で排出される温室効果ガスのうち、最も多い割合を占める二酸化炭素。地球温暖化を防止するため、世界中で二酸化炭素削減に向けた取り組みが進められています。
しかし可燃ごみを処分する過程では、ごみの運搬や焼却に温室効果ガスである二酸化炭素が発生します。
また世界では食品廃棄物を埋め立て処理する国もあり、埋立の際に発生するメタンガスは二酸化炭素よりも高い温室効果があることで知られています。
このように毎年膨大な量の食品を捨てることは、それだけ余計な温室効果ガスを排出してしまうことでもあるのです。
食品ロスを削減すれば、ごみの廃棄量を減らせるため、地球温暖化を防ぐ取り組みにも貢献できるでしょう。
世界の食糧不足も加速する
現在、世界では9人に1人が栄養不足で苦しんでいます。その一方で、多くの食品を輸入に頼っている日本では、年間570万トンもの食品が廃棄されているのが現状です。
世界の人口は2022年に80億人に達し、今後さらに増加する見通しです。将来的に人口が急激に増加すれば、貧困や飢餓を解消するのが困難になることが心配されています。
食品ロスを削減する取り組みは、将来起こりうる食糧不足への対策の1つにもなっているのです。
スーパーの食品ロス削減への取り組み
食品ロスを削減するには、ロスを発生させない仕組み作りや販売できなかった商品の再利用、再資源化などの取り組みが必要です。このような取り組みは生産・流通・販売のそれぞれの過程で進められています。
私たちの生活に身近なスーパーでは、どのような対策がとられているのでしょうか?スーパーの食品ロス削減の取り組みを紹介します。
「3分の1ルール」を「2分の1ルール」に
食品の流通過程では、製造から賞味期限までの日数を3等分して納品や販売期限を決める「3分の1ルール」と呼ばれる商慣例が浸透しています。
例えば賞味期限が6か月ある商品の場合、製造されてから2か月後が納品期限となり、さらに2か月後が販売期限になります。納品や販売の期間が短いため、期限内に納品や販売ができなかった食品が廃棄されやすくなるのが問題でした。
しかし近年では「3分の1ルール」から、製造から賞味期限までの2分の1にあたる日を納品期限とする「2分の1ルール」へ緩和する動きが広がりつつあります。これにより、賞味期限6か月の食品では3か月後が納品期限となり、食品ロスが減らせるようになりました。
また、販売期限は小売り店が賞味期限内で自由に設定できるようになったため、今までより長く店頭で販売できるようになりました。
京都市はこの販売期限を賞味期限まで延長する実験を行い、廃棄される数量の変化について調査しました。その結果、前年に比べ約10%の廃棄量抑制効果が確認され、調査時に行った市民へのアンケートでは、9割が販売期限の延長に賛成する結果に。販売期限を見直す動きも進んでいます。
見切り品・訳あり品として販売
スーパーの鮮魚や精肉コーナーでは一定の時間が過ぎたものを、価格を下げて販売しているのを見かけたことがあるのではないでしょうか。
その他の食品でも「見切り品」や「訳あり品」として賞味期限や消費期限が近くなった商品の値段を下げて販売しています。
商品棚に「すぐ食べるならお得な商品がおすすめ」などのステッカーやポスターを掲示して、見切り品の利用を促したり、見切り品を棚の手前に配置したり、購入しやすい工夫で食品ロス削減を目指しています。
訳あり商品として価格を下げて販売すれば消費者はお得に購入でき、スーパーは廃棄を削減できるため、双方にメリットが感じられるでしょう。
販売数に上限を設ける
食品の小売業界では欠品を起こさないために商品を多めに入荷し、常に在庫を保持する傾向があります。常に購入できる状態である一方で、それは同時に売れ残りが発生する可能性を高くすることでもあるのです。
特に季節商品は限られた期間にできるだけ多く販売したいと考えるため、大量に在庫を持つ傾向があり、恵方巻やクリスマスケーキの大量廃棄は食品業界の課題と言われています。そこで大量破棄を避けるため、近年はこれらの季節商品も販売数を限定して売り切る方針をかかげる小売店が増えています。
ほかにも1日の販売数を決めて、売り切れ次第営業を終了するような小売り店舗も見られるようになりました。販売数を決めることで、廃棄をなくせるだけでなく製造や販売にかかるコストの最適化も期待できます。
フードバンクに寄付する
フードバンクは、企業や家庭で発生したまだ食べられる食品を寄付してもらい食品を必要とする人に届ける活動をする団体です。寄付により集められた商品は、子ども食堂や生活困窮者や福祉施設などへ届けられています。
スーパーでは、販売期限内に売り切れなかった商品などをフードバンクを通じて必要な人に届ける取り組みが進められ、食品ロス削減だけでなく貧困者の救済の一助にもなっているのです。
中には独自のフードバンクを持つ企業もあり、自社の店舗のまだ食べられる食品や提携の農家から寄付された農作物を食品が必要な人に届けて、食品ロス削減に努めています。
賞味期限が迫ると自動値引きする仕組みも
食品の値引きをすれば売り切りが可能になり食品ロス削減が目指せます。けれども、シールを貼る手間がかかったり、値引きのタイミングが難しかったりと課題も多いのが問題です。
そこで、IoTなどの技術を利用したシステムが次々と開発されています。
例えば、店舗ごとの販売状況に応じて値引きが最適なタイミングを知らせてくれるシステムや、商品のバーコードを専用機器で読み取ると賞味期限に応じた値引きシールを発行するシステムなど、スーパーの値引きを効率的に行えるようになります。
スーパーによっては、このようなデジタル技術による値引き管理を導入し、在庫管理を簡単にする取り組みが進められています。
私たちが買い物時に気をつけるべきこと
食品ロスを減らすためには、スーパーが捨てる商品を出さない努力が必要ですが、消費者側が意識して行動することも必要です。食品ロスを減らすために、私たちが買い物で気をつけるとよいことを紹介します。
使い切れる分だけ買う
店頭でいつもより価格が安くなっているのを見かけると、つい多めに買ってストックしておきたくなりますよね。しかし、それは食品ロスに繋がりやすい行為でもあります。
実は、日本での年間の食品ロス量522万トンのうち、家庭からの食品ロスは247万トンと全体の約53%を占めています。
冷蔵庫やストック場所に食品が増えると使い損ねて賞味期限が過ぎてしまうものも多くなります。食べられなくなって捨ててしまえば食品ロスだけでなく、購入したお金も無駄になってしまうのです。
そのため、食材の買い物をするときには多めに購入せずに使い切れるかどうかを考えて購入し、食べ切れる分だけ作ることを心がけましょう。
商品は「てまえどり」を
食品ロス削減の対策として、「てまえどり」があります。てまえどりとは、スーパーなどに陳列されている商品を棚の手前にあるものから購入すること。
多くのスーパーでは、店員が先に仕入れた商品を手前に並べ、古いものが残りにくくなるようにしています。
購入する側からすればできるだけ賞味期限が長いものを選びたいと思ってしまいますが、手前から購入しない人が増えるとスーパーには賞味期限が近い商品が残り、「まだ食べられる食品」が捨てられることになってしまいます。
賞味期限が過ぎたらすぐに食べられなくなるというわけではありません。保存期間が長い商品やすぐに食べる予定の商品を購入するときには、てまえどりをこころがければ食品ロスを減らすことに協力できるでしょう。
食品ロスはみんなの意識が大切
私たちがよく利用するスーパーでは、「3分の1ルール」を緩和して廃棄を減らす工夫や在庫を持たない工夫をして食品ロス削減に取り組んでいます。
とはいえ、食品ロスの削減はスーパーなど企業だけの取り組みでは解決できず、みんなで解決していくべき問題です。
スーパーで買い物するときは、なるべくてまえどりを意識したり、値引きや訳ありの食品を積極的に取り入れて、食品ロス削減をめざしましょう。
Kuradashiでも、品質に問題なくおいしく食べられるにも関わらず、捨てられてしまう可能性のある商品を通常よりも低価格で販売しているので、ぜひチェックしてみてください。