給食での食品ロスの現状と原因、対策。実際の取り組み事例も紹介

給食での食品ロスの現状と原因、対策。実際の取り組み事例も紹介

日本において、食品ロスは年間522万t(令和2年度推計値)にのぼるとされています。これは国民1人につき1年で約41kgの食品が廃棄されている計算です。そして食品ロスは家庭や飲食店だけでなく、学校給食でも日々発生しています。

この記事では、学校給食から出る食品ロスの現状と原因をまとめました。また、食品ロス削減に取り組み、実際に成果をあげている事例を複数解説します。さらに、私たちが個人で行える食品ロス対策も紹介します。

学校給食における食品ロスの現状

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教室のイス

食品ロスは飲食店や小売店だけでなく、学校も一丸となって取り組むべき大きな課題です。環境省は全国の教育委員会を通して、学校給食を実施している小・中学校から得られたアンケート結果(回答率80%)を発表しました。

それによると学校給食から発生している食品ロスは、児童・生徒1人あたり年間約17.2kgにのぼるとのことでした。詳しくは後述しますが、主な原因には食べ残しや調理残さが挙げられます。

ただ、すべてがごみとして処分されているわけではなく、そのうち59%はリサイクルされています。リサイクル内容として最も多いのは肥料(40%)、次に多いのが飼料(18%)、メタン化(1%)です。しかし残り41%は廃棄対象となり、そのうちの38%は焼却処理されているのが実状です。

学校給食から出る食品ロスのリサイクル率は、過去3年間と比較してもほぼ横ばいで大きく変わっていません。つまり食品ロスの削減に向けて、改善の余地は残されているといえます。

給食での食品ロスの原因

学校給食で食品ロスの主な原因となっているのは、食べ残しと調理残さです。子どもたちが給食を食べ残す理由、調理残さの要因を解説します。

好き嫌いや量が多すぎることによる食べ残し

学校給食における食品ロスで、最も大きな原因が食べ残しです。環境省の調査報告では、児童・生徒1人あたり年間17.2kgの食品ロスが生じているとありましたが、その内訳で食べ残しは7.1kgであり、全体の約4割を占めています。

小・中学校の生徒を対象に、独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施した「平成22年度児童生徒の食事状況等調査報告書【食生活実態調査編】」によると、食べ残しをする理由として最も多かったのが「嫌いなものがある」ことでした。

調査のなかで「食べ残しをする」と回答した生徒を対象にその理由を尋ねた結果、好き嫌いを理由にした生徒は小・中学生において60%を超えています。ほぼ3人に2人が学校給食に嫌いなものが出ると、食べずに捨ててしまっている現状がわかります。

また、小・中学生ともに嫌いな食べものとして上位に挙がったのは、野菜類や魚介類でした。

調査報告書によると、食べ残しの原因には嫌いなものがあること以外に、量が多すぎることや給食時間の短さも挙げられています。

調理時の過剰な除去

調理残さも学校給食で食品ロスが出る大きな原因です。環境省の調査報告でも、調理残さによる食品ロス発生量は児童・生徒1人あたり年間5.6kgであり、食べ残しに次ぐ全体の約3割を占めます。

調理残さとは、調理時に出る食材くずなどのことをいいますが、本来なら食べられる部分も多く捨てられているのが現状です。

例えば、泥つき野菜の葉の部分を余分に取り除くことや、皮つき野菜はアクが出やすく子どもたちが食べにくいと考えることによって、本来食べられる部分も過剰に除去されているケースが見られます。

そのため、皮のむき過ぎに注意する、食材の切り方を変える、道具を使ってロス部分を少なくする、計画的に食材を購入・管理するといった、調理方法に工夫を凝らしたり食材の調達方法を改善したりすることが、調理残さの削減につながります。

給食における食品ロス対策事例

2つのイス

ここからは、学校給食の食品ロス削減に取り組み、実際に成果をあげている事例を見てみましょう。具体的な対策として、食材のカット方法の変更や食育、調理時間の短縮、学習会・交流会の実施、廃棄物の再利用などが挙げられます。

群馬県高崎市の事例(残さの削減・地域との連携)

群馬県高崎市の給食センターでは、カット方法の変更による調理残さの削減や、生産者との連携による規格外の食材の調達、納品期限・販売期限の切れた食品の活用などに取り組んでいます。

たとえば、玉ねぎやピーマンは食べられる部分をできるだけ廃棄しない切り方に変更、これまで廃棄していたにんじんの皮も状態の良いものはそのまま調理に使用するといった工夫を実施。皮つきでは調理が難しい大根も、むいた皮を切り干し大根に加工することで廃棄量を削減しました。

さらに、地域の生産者と毎月会議を開いて密接に連携し、割れていたりサイズが大きすぎたりして商品として卸せなくなった規格外の食材や、出荷経費がかさむといった理由で廃棄予定になっていた食品を積極的に活用。

他にも、まだ食べられるにも関わらず商習慣の「1/3ルール」に従い、賞味期限が迫っているために廃棄対象になってしまった商品を、安全性を十分確認したうえで活用するといった取り組みも行っています。

千葉県市川市の事例(食育・啓発)

千葉県市川市では「かしこくおいしく食べきりチャレンジ」と銘打ち、特定の1週間で座学による食育、歌による啓発、チャレンジシートを使った振り返りなどを行い、食品ロスへの意識改革に取り組んでいます。

期間中は15分の朝学習の時間を使って、冊子やビデオ教材を用いた座学を実施。食品ロスとは何か、食品ロスの影響などを伝えて、食べ残しを減らす意識を育てます。

食べきりチャレンジ期間中は給食時間に市川市在住のミュージシャンが提供した楽曲「たいせつに食べてね!」を校内放送で流し、歌詞を通して食べ物の大切さや感謝して食べることの理解を深めます。

給食後には、毎日チャレンジシートに目標を達成できたか記載。そして1週間の「食べきりチャレンジ」終了時に振り返りを行い、感想や食品ロスを減らすための今後の目標を立てます。

取り組み後のアンケート調査によると「給食を残さずに食べようと思った」「栄養士や調理員に感謝して食べるようになった」と回答する生徒が多く、食べ残しに対する生徒の意識が以前より高まりました。

京都府宇治市の事例(給食準備時間の短縮)

京都府宇治市では、給食準備時間の短縮や学習会・交流会の実施を行う1週間の「食べきり週間」を通し、食品ロスに取り組んでいます。

給食準備時間の短縮では、午前の授業終了後に素早く配膳を行い、食事を開始するまでの時間を10分以内に済ませるよう取り組んでいます。それにより食べる時間を増やし、食べ残しを減らすことが目的です。

生徒に準備時間を短縮することの必要性を説明し、タイマーを使って時間を計測。達成できた場合は点数を付与して廊下に掲示するといった意識改革を図った結果、食べ残しが1人あたり65%削減しました。

また、1週間の「食べきり週間」期間中に行われる学習会では、市職員が給食を食べきることの大切さを伝えたり、クラスの食べ残し量を説明したりします。さらに交流会では、職員が生徒と一緒に給食を食べながら、給食の大切さを話し合います。これらの取り組みにより、食品ロスが40%削減しました。

上記の施策の結果、食品廃棄量を97%削減という非常に高い効果が得られました。

渋谷区立加計塚小学校の事例(残さのリサイクル)

渋谷区立加計塚小学校では、微生物の力で食物残さを堆肥化させるコンポストボックスを設置。学校から出る食物残さをすべて学校内で処理し、100%リサイクル利用するプロジェクトに取り組んでいます。

微生物の提供には民間のバイオベンチャー企業が協力しており、同社の技術で通常よりも速く残さの発酵・分解が可能です。学校給食での生徒の食べ残しや生ごみが、コンポストボックスのなかで微生物によって分解されて、水や二酸化炭素、堆肥になります。

作られた堆肥は、地域と学校が共同運営する畑「KAKEZUKA FARM」で育てる野菜の肥料として活用。コンポストボックスの組み立てには生徒たちも参加し、できあがったコンポストボックスに給食残さを入れてかき混ぜる作業も生徒たちが行っています。

生ごみの焼却処理には膨大なエネルギーが必要であり、大量の二酸化炭素も発生します。食品ロス削減には廃棄量を減らすだけでなく、リサイクルを意識することも重要です。

SDGsの観点からも食品ロス対策は必須

牛乳

世界の食品廃棄量は年間約13億tといわれており、私たち人間が食べるために生産された約3分の1がそのまま捨てられています。一方、世界では9人に1人の子どもが飢餓に苦しんでいるのが現状です。

また、SDGs12「つくる責任 つかう責任」の第3項目には以下の記載があります。

「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。」

食料廃棄と飢餓という世界に見られるアンバランスな実情や、SDGs12.3に掲げられている目標を考えると、食品ロスの削減は喫緊の課題です。また、日本では学校給食による廃棄だけでなく、家庭や食品関連事業から出る食品ロスが大きな問題です。

冒頭で触れたように、日本では推計で年間約522万tの食品ロスがあり、このうち275万tは事業系、247万tは家庭から出ています。残念なことに、家庭からも大量の食品ロスがあることがわかります。家庭で食品が捨てられる主な理由は、食べ残し(57%)、傷んでいた(23%)、期限切れ(11%)です。

これらの理由は、少しの意識改革で十分改善できるものであるため、私たち一人ひとりが意識を高め、個人でも可能な食品ロス削減の行動を取ることが大切です。

個人でもできる食品ロス対策

本記事では、学校給食での食品ロス問題を解説しました。給食の食品ロスは、食べ残しや調理残さが主な原因です。

いくつかの自治体や学校ではこれらの課題の改善に積極的に取り組み、成果をあげています。具体的には子どもたちへの食育や、学習会・交流会を通した啓発、食べ残しの堆肥化、また給食センターではカット方法の改善、皮つき野菜の提供などを実施しています。

食品ロスは学校だけでなく半数近くは家庭から出ており、私たちにもできることから対策することが重要です。個人でもできる食品ロス対策には日頃の意識変革が大切ですが、ソーシャルグッドサービスの活用なども効果的といえます。

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くらだしマガジン編集部

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