目立たずとも、日頃の食生活を多面的に支えている野菜加工品。みなさんも毎日のご飯に利用することが多いのではないでしょうか。とはいえ、ほとんどの日本人が野菜不足と言われており、手軽に野菜の栄養を取れる野菜加工品へ注目が集まっています。
この記事では、そんな野菜加工品の種類や意外に知られていないメリットを紹介していきます。野菜不足に悩んでいる人、また生野菜は使い切るのが大変と思っている人は、ぜひ野菜加工品を積極的に使っていきましょう。
野菜加工品とは?食品は3つに分けられる
野菜加工品とは、製造や加工が施された野菜のことです。
内閣府が定める食品表示基準によると、「製造」とは本質的に原料とは異なる食品を作り出すこと、「加工」とは食材の本質を保持しながら、新しい属性を加えることを意味します。
よって、野菜加工品には下記のようなものが挙げられます。
- 野菜を使った缶詰
- 漬物
- 冷凍食品
- サラダミックス
- フリーズドライ
- ジュース
など
少し紛らわしいのがカット野菜で、1種類の野菜を切って提供するだけでは加工食品に含まれず、生鮮食品に分類されます。一方で複数のカット野菜を混ぜ合わせた場合(サラダミックスなど)は野菜加工品とみなされます。
では、加工食品と生鮮食品の違いは何なのでしょうか。食品表示法で定められた「加工食品」「生鮮食品」「添加物」の3つの区分について詳しく見ていきましょう。
加工食品
上述の通り、製造または加工された飲食物であれば、果物・野菜・水産物と種類を問わず一様に加工食品に区分されます。
他にも、めん・パン類を含む穀類加工品、豆類調整品(豆腐・油揚げなど)、菓子類、香辛料及び調味料、飲料水や氷を合わせた飲料全般も加工食品に属します。
また、保存期間を延ばす目的で冷凍前に加熱する(ブランチング処理)ケースも、扱う食材を問わず加工食品に定められます。
生鮮食品
生鮮食品とは、食品表示基準において加工食品にも添加物にも属さない食品のことで、収穫・水揚げされた状態の農産物や水産物などが挙げられます。
上述したカット野菜のように、基準に沿って仕分けや分類(袋詰めなど)、調整(殺菌洗浄など)したものも、生鮮食品に分類されます。
食材を切断しても同一食品に限り加工とみなされないため、千切りキャベツ、マグロの刺身や豚ひき肉はいずれも生鮮食品扱いです。
添加物
添加物とは、食品の製造加工や保存の目的で添加されるものです。添加物と聞くと「人工的」と連想する人もいますが、「天然」や「合成」に関わらず、食品安全委員会が定める一定の規格や基準を満たしたものが食品添加物として認可されています。
具体的には、固めたり溶かしたりといった食品の製造加工に必要な製造用剤、風味や外観を良くする甘味料、着色料、香料、食品の保存性や安定性を高めるための保存料や酸化防止剤、食品の栄養価を補強する栄養強化剤(ビタミン類・ミネラル類・アミノ酸類)などが挙げられます。
手間なく野菜を摂取できる!野菜加工品のメリット
野菜加工品には、魅力的なメリットが揃っています。まずは、保存性や安全性が高いこと。加工することで保存性が高まり、殺菌処理が確実に行き届くため食の安全性も向上しています。
また、必要に応じて栄養を付加できるほか、野菜特有の癖を減らし、野菜が苦手な人向けにより食べやすく調整することも可能です。生野菜が苦手でも、ジュースや漬物なら野菜を食べれると言う人もいるでしょう。
そして、野菜自体が水分を多く含むことから、野菜をそのままの状態で食べるより、加工品の方が比較的少量で十分な野菜の栄養を補給できるという面もあります。
ほとんどの日本人が野菜不足
冒頭でも紹介した通り、豊かな食生活を享受しているはずの現代ですが、実はほとんどの人が1日に必要な量の野菜を摂れていません。
厚生労働省「平成30年国民健康・栄養調査結果」では、どの世代を見渡しても、1日に必要な野菜の摂取基準に満たない結果が並んでいます。こうした野菜の摂取状況を「皿」に換算した場合、20歳以上の大人の約3割が1〜2皿分/日しか摂取しておらず、昨今の野菜不足の食事情が浮き彫りになっています。
野菜不足だとどうなる?
こうした野菜不足は、さまざまな角度から私たちの健康面にネガティブな影響を及ぼす可能性があります。
まず挙げられるのが、腸内環境へ及ぼす影響です。野菜に多く含まれる食物繊維は、腸内の善玉菌を増やすほか、便を柔らかくして腸の運動を活発にする働きを担っています。(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット)
そのため、野菜が不足して腸内環境が悪化すれば、便秘や下痢などにつながる可能性があります。
また野菜不足により、ビタミン類やミネラル類、ポリフェノールやカリウムなどの栄養が不足すると、体内の代謝が滞ったり肌荒れを起こしたり、生活習慣病を招いたりする恐れがあることも広く知られています。
1日に必要な野菜の量は?
厚生労働省が推進する基本方針「健康日本21」では、成人が1日に摂取する野菜の目標量を350kgに定めています。
一方、実際の野菜摂取量(平均値)は、「国民健康・栄養調査結果の概要(令和元年)」によれば、男性288.3g、女性273.6g、双方を総合すると280.5gを記録し、ここ10数年間は目立った増減も見られない状況です。
年代別では、男女ともに60代以上が1日300g以上と比較的摂取量が多く、年代別で最も野菜を食べる量が少ない20代では男性が233g、女性が212.1gにとどまっています。
このように、特に若い世代の野菜不足が深刻な水準にありますが、自身の健康のためには、現状より少なくとも5割増しの野菜を摂取することが推奨されます。
非常食にもおすすめ!人気の野菜加工品
野菜摂取が不足しがちな傾向を見直すためにも、食べやすくて保存性にも優れる野菜加工品に注目が集まっています。ここでは、気軽に食べれる6つの野菜加工品と、その活用法も含めて紹介していきます。栄養満点で非常食としても重宝しますよ。
野菜の缶詰
野菜の缶詰では、トマト缶、コーン缶、ミックスベジタブル缶などが人気商品です。
栄養価も抜群のトマト缶の場合は、コンソメスープの素と混ぜ合わせることで洋風トマトスープやパスタソースとしても美味しくいただけます。
コーン缶やミックスベジタブル缶は、サラダやメインディッシュに具材を追加したいケースにも重宝します。鮮やかな彩りが加わり、盛り付けの面でもアクセントになるでしょう。
野菜ジュース
野菜ジュースの場合は、複数の野菜・果実を混ぜた、いわゆるミックスジュースが一般的です。野菜単独のタイプでは、栄養成分のリコピンを摂れるトマトジュースが根強い人気を集めています。
野菜ジュースは飲料というだけあり、シーンを選ばず効率良く野菜を摂取できる点が魅力です。例えば、お弁当で野菜系のおかずが足りない場合でも、野菜ジュースと一緒に食事をすれば栄養の偏りを防げます。
さらに、トマトジュースはスープや煮込み料理の材料としても幅広く使える万能タイプです。
乾物
野菜乾物の中では特に切干し大根が有名ですが、他にも玉ネギ、トマト、ニンジン、各種葉物などさまざまな食品が流通しています。どれも長期間保存できるうえ、必要な分量だけを戻せるという使い勝手の良さもメリットです。
また、基本的に水分だけが抜けて野菜本来の栄養が残るため、生野菜以上に栄養が凝縮されているのも特徴の1つ。野菜乾物はお湯で戻すときに野菜の旨味が溶け出すので、煮物や炊き込みご飯のように、野菜の出汁まで余すことなく活かせる料理がおすすめです。
フリーズドライ
フリーズドライとは、凍らせた食品に真空凍結乾燥機の処理を施したもので、お湯をかければ瞬時に食べられる状態に復元できるという高機能な製法です。
野菜加工品では具材も選べるお味噌汁が特に人気が高く、お湯と容器さえあれば、必要に応じて本格的な汁物を食卓に追加できます。
お味噌汁を作るのが面倒というときはもちろん、常温保存可能な軽量コンパクトサイズなので、非常食や携帯食としても重宝しますよ。
冷凍食品
野菜の冷凍食品は、カット済みや下茹での後に冷凍されたものが多く、解凍後はほとんど手間をかけずに食べられるよう工夫されています。
特にブロッコリー、枝豆、アスパラ、オクラ、ほうれん草などが人気商品で、3〜5種類の野菜をミックスした冷凍野菜も流通しています。
根菜類を数種類含むタイプならば、カレーやシチュー、炒め物のような料理を作るときにもまるごと活用できるでしょう。
お菓子
野菜はお菓子に加工しても美味しく食べられます。特に、野菜本来の旨みや栄養をそのまま活かせる「野菜チップス」は魅力的な選択肢です。
油で揚げるのではなく、乾燥させて作ったチップスは、野菜乾物と同じく栄養価が凝縮しています。ヘルシーなので健康面が気になる大人のおやつとして、また子供たちのおやつとしてもおすすめです。
砂糖や油の分量を加減しつつ、マッシュしたニンジン、かぼちゃ、さつまいもなどを生地に合わせて焼き上げれば、風味豊かで健康的なケーキやマフィンを楽しめます。
採れた野菜を加工して販売する農家も
収穫した野菜を、農家が独自に加工して販売する取り組みが話題を集めています。このビジネスモデルは、第1次・第2次・第3次産業の要素を含むことから、すべてを足し合わせて(掛け合わせて)第6次産業とも呼ばれており、農家が恒常的に抱えてきた問題を解消する可能性を示しつつあります。
というのも、これまで形が悪いことが理由で市場に出荷できなかった野菜を農家自ら加工して消費者に届けることで、収入を得られるほか、野菜を無駄なく利用することができるのです。
また、従来の出荷ルートでは無縁だった消費者層とも接点が生まれること、農家側が主導的に価格設定できることも、第6次産業の特徴。
現在では、昔から見られる手作りジャムやジュースに加え、調味料や化粧品に至るまで幅広い商品が作られています。
まとめ
日頃から野菜が足りていない私たちにとって、野菜加工品は少ない手間で充実した分量の野菜を摂取できる魅力的な存在です。
さらに、大手企業だけでなく、各農家が趣向を凝らした野菜加工品を幅広く展開するようになりました。
主菜やおやつ、さらに非常食としても最適な野菜加工品を存分に活用して、1日における野菜摂取量を着実に増やしていきましょう。