
房総の玄関口・木更津。 アウトレットモールのすぐ近くに、ひと味違うショッピング体験ができる「KISARAZU CONCEPT STORE(以下「KCS」)」はあります。 「デッドストック」
や「B品」といった“訳アリ”のイメージを、“ワクワク”に変えるその空間は、まるでテーマパーク。今回は、その仕掛け人である伊藤さんに、くらだしマガジン編集部が直接お話を伺いました。
ブランドの信頼とお客さまの期待をつなぐ、KCSの“入口設計”

KCSの建物は、元々三井アウトレットパーク木更津の駐車場だった場所に建てられました。屋根は発電効率を考慮した形の“のこぎり屋根”。建物全体で使うエネルギーの100%以上を自らまかなう、「ZEB認証」を取得しており、サステナビリティへのこだわりが空間設計の段階から貫かれています。
そして何より印象的なのが、「入場ゲート」。KCSは入店に300円の入場料が必要です。その一部は「コントリ」という仕組みを通じて、服を肥料や紙に生まれ変わらせる活動をする団体などの支援に充てられます。
KCS伊藤さん:
「ブランド棄損につながるような懸念を払拭するために、あえて入場ゲートを設けました。 ただ入場を制限するというよりも、しっかりとコンセプトに基づいた世界観の中で、ワクワクするような買い物体験を提供する——その設計があったからこそ、ブランドさんにも“この場所なら協力したい”と共感していただけたと感じています。」
「正しいより、楽しい」——“4つのしない”が生むワクワク

クラダシ:
「入ってすぐに感じたのが、目から入る情報がすごく楽しいということでした。ひとつひとつが気になって、思わず手に取って見たくなる展示ですね。」
KCS伊藤さん:
「ありがとうございます。 視線の流れや商品の並べ方にはかなりこだわっています。 普段だったらスルーしてしまうような服でも、あえて異なるテイストと組み合わせて並べることで、自然と目に留まるようにしているんです。“見せ方のアップサイクル”という発想ですね。」
この考え方は、KCSの象徴ともいえる「4つのしない」にもつながっています。
過度な接客をしない/ブランド・カテゴリーで分けない/試着制限をしない/返却台を片付けない
どれも、偶然の出会いを楽しむ余白を残すための工夫です。
決められたルールや効率ではなく、楽しさと自由をベースにしたKCSの売り場は、まるで“服のテーマパーク”。ひとつひとつの服に宿る“まだ見ぬ可能性”を、来場者それぞれが自由に見立てていく。そんな体験が、この場所には広がっています。
この発想は、洋服にとどまりません。店内の什器の多くも、廃棄されるはずだったものや行き場を失ったものを再利用してつくられています。さらに内装設計においては、塗装や接着を極力避け、ネジ止めにとどめることで、いつでも“解体して再利用できる”設計を実現。将来的な廃棄を見据え、新たなサイクルを生み出す工夫がなされています。

什器ひとつとっても、見方を変えれば価値が生まれる——そんなKCSの価値観が、空間全体に息づいています。
ファッションの枠を超えて、「社会とつながる場」へ

館内の「FACTORY LAB」は、ファッションを超えて“社会とつながる場”として機能する空間です。学生が講義やワークショップに参加する学びの場として活用されるほか、多様なアーティストとの展示会も実施。障がいのあるアーティストとの協働もあり、作品を通じて新たな視点や気づきが生まれています。服を入り口に、社会課題への関心や対話を自然に広げられる場となっています。

KCSでは、来場いただくお客さまとアートとの新たな接点として、複製画やアップサイクルアイテムも多数展開しています。本物のアート作品は価格的にハードルが高くなりがちですが、インテリアとして気軽に楽しめるよう複製画という形で提供。買う人だけでなく、“見に来るだけ”の人にもアートの魅力に触れてもらえる仕掛けとなっており、アパレルに馴染みのなかった層にも世界観が広がりつつあります。
クラダシ:
「企業とのコラボや協業で、これまでになかった可能性や面白さが膨らむんですね。」
KCS伊藤さん:
「いろんな世界観とKCSを掛け合わせていくことで、お客さまにも、協業してくださる企業やクリエイターの方々にも、新しい接点が生まれていくと思っています。その中から、“KCSだからこそ生まれる世界”の可能性が広がっていけばうれしいですね。まずは、楽しいとか面白いと感じてもらうことから始まり、最終的には、私たちが本当に伝えたいことが自然に届く。そんな波を、ここからつくっていけたらと思っています。」
クラダシ:
「洋服にとどまらない新たな世界や接点の創出には、単純に面白さやワクワク感がありますね。」
KCS伊藤さん:
「そうですね。この場所が、ただ服を売っているだけでは面白くないと思っています。お客さまにも『いろいろ体験できたよね』『なんか面白いお店だったね』と感じていただきたいんです。
例えば、敷地内の“ガーデンエリア”には、ファッション物流で使われていたパレットを再利用して作ったラジコンコースがあります。本来、服の輸送に使われていたパレットは役目を終えると廃棄されてしまいますが、私たちはそれを“遊びの場”として生まれ変わらせました。遊び方は自由で、子どもも大人もみんなで仲良く楽しんでいただいています。買う人はもちろん、買わない人にも楽しく過ごしていただける空間づくりを大切にしています。」

くらだしマガジン編集部が見つけた!
KCSで心が踊る“ワクワク体験”3選
1.「カートを手にした瞬間からワクワク!気になる服が抱えきれないほど」

入場してすぐに、カートが用意されていることに驚き!たくさん商品を試せる予感、、、

“ちょっと見るだけ”のつもりが、気がつけば気になる服でカートがいっぱいに! まるで宝探しのような感覚で、次々と出会う一着一着に心が躍ります。
2.「試着室がまるでステージ!?“フィッティングスタジオ”でファッションショー体験」

KCS名物「フィッティングスタジオ」は、なんと21屋もあります! カラフルで個性豊かなブースは、2人でもゆったり使える広さ。 ぜひ家族や友人と一緒にお入りください。 まるでステージに立つような気分で試着を楽しめます。

廊下に設けられた大きな鏡では、“どっちが似合う?”なんて相談もしやすく、会話が自然と弾みます。
3.「遊んでおトク!Dゾーンではゲームで割引体験」

Dゾーンには、体験型のゲームで割引が決まるユニークな仕掛けが!10%〜最大40%オフまで運次第。 実はこのゲーム台、近くの舞台装置制作会社で不要になった資材を一部再利用してつくられているんです。楽しい上に、アップサイクルのストーリーまで秘められた仕掛けは、KCSらしさが詰まっています。
KISARAZU CONCEPT STOREからのメッセージ

写真奥: 伊藤さん(KCSの仕掛け人)
クラダシ:
「総じて、全身で楽しさを吸収したような感覚でした! “また着たい ” “また行きたい ”と思わせてくれる楽しさがある。 ここでの体験は、ただ来て終わるじゃなくて、自然と次のアクションにつながっていくなと思いました。」
KCS伊藤さん:
「服がちょっとでも好きな方には、きっと楽しんでいただける場所だと思っています。でも、それだけじゃなくて、いろんな発信をきっかけに、ふらっと立ち寄ってくださる方が少しずつ増えていったら嬉しいなと。
『正しさ』とか『SDGs』って、どうしても少し身構えてしまうこともあると思うんです。だからこそKCSでは、そういうことを押しつけずに、“楽しい”と感じてもらえる体験を通して、自然と何かが伝わるような空間を目指しています。
なので、気合を入れて来る必要なんてまったくなくて、帰るときに“なんか楽しかったな”と感じていただけたなら、まずはそれが何よりだなと思っています。その楽しさの延長に、結果としてデッドストックを減らすことがあるなら、僕たちにとっては本当にありがたいことですね。」

写真中央: 岡﨑さん(KCS店長) / 写真右: 西村さん(2025年新卒入社)
KISARAZU CONCEPT STOREは、肩肘を張らずに「楽しい」を感じられる場所として、訪れるすべての方に新たな発見や気づきを届けています。ファッションを軸にしつつも、SDGsや社会課題への意識を押しつけることなく、自然と興味が湧く工夫が随所に息づいていることが、この場所の大きな魅力です。
ここで過ごす時間は、単なる商品購入にとどまらず、次の行動や考え方へとつながる可能性を秘めています。誰もがふらっと立ち寄り、「なんだか楽しかったな」と感じることこそ、この場所での最初の一歩。その楽しさがやがて未来の新しい価値や選択につながっていきます。
訪れる人それぞれの自由な発見や想像を引き出す仕掛けが散りばめられ、社会とつながる体験が息づくこの空間は、まるで参加型のテーマパークのよう。
KISARAZU CONCEPT STOREは、単に服を売る場所ではなく、「まだ知らない可能性」と「社会をおもしろがるきっかけ」に出会える場です。
誰もが“心おどる選択”をできる未来へ。
その第一歩を、ぜひKISARAZU CONCEPT STOREでご体感ください。
【KISARAZU CONCEPT STORE アクセス情報】
▽住所:
〒292-0009 千葉県木更津市金田東3丁目1-1(三井アウトレットパーク 木更津 南側すぐ)
▽アクセス:
- 車でお越しの場合:東京湾アクアライン「木更津金田IC」より約5分
- 電車・バスでお越しの場合:JR「袖ケ浦駅」または「木更津駅」から路線バスで約10分
営業時間:10:00〜18:00(最終入場17:30)
※定休日は施設カレンダーをご確認ください
入場料:300円(うち一部が社会貢献活動に活用されます)
公式サイト: https://kisarazu-concept-store.com/
くらだしマガジン編集部
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