食の未来は、ひとりではつくれない。── 中西製作所が共創拠点「Co.LAB∞」に込めた想い

食の未来は、ひとりではつくれない。── 中西製作所が共創拠点「Co.LAB∞」に込めた想い

学校給食でトップクラスのシェアを持ち、コンビニや外食チェーンの現場にも機器を供給してきた中西製作所。同社は今、単なる厨房機器メーカーを超え、食の現場とともに「いただきますの未来」をつくろうとしています。

その象徴が、東京本社に併設された共同研究拠点「Co.LAB∞(コラボエイト)」。ここでは、調理テストからレシピ開発、最新技術との実証実験まで、社内外の多様な人々が日常的に手を動かしています。

本記事では、実際にCo.LAB∞を訪問し、調理研究を担う管理栄養士の伊藤さんと、経営企画室の米川さんにインタビュー。
中西製作所が目指す「共創のかたち」と、若手や異分野出身者が挑戦を重ねるリアルな現場に迫ります。

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・伊藤さん(フードシステム部・調理研究担当)

管理栄養士として、過熱水蒸気オーブン「SVロースター」などの調理機器を使ったメニュー開発やテスト調理を担当。前職では食品メーカーで商品企画に従事していた経験を活かし、「食の美味しさを、理論と実践で支える」立場として現場に寄り添う。

 

・米川さん(経営企画室)

看護師・保健師としてのバックグラウンドを持ち、現在はIR、PR、マーケティング、M&Aなどを担当。自身の原体験から「食のインフラを支えること=社会課題の解決」と捉え、中西製作所での多岐にわたる業務を通じて、次代の共創を推進している。

 

 

■「食の現場」とともに歩んできた、その先へ

私たちは、1946年に給食用アルミ食器を販売開始して以来、全国の給食センター、食品工場、外食チェーンなど、“大量に、確実に、安全な食を届ける現場”と向き合い続けてきました。

ただ機器を納めるのではなく、現場の動線やオペレーションまで含めて設計からアフターフォローまで提案する。そうした積み重ねの中で、中西製作所は“ただの厨房機器メーカー”ではない、という信頼を築いてきたのだと思います。

たとえば「1時間で数千食をつくる」給食現場では、数秒のロスさえも見逃せない緊張感があります。
機器の配置、作業の動き、人の流れまで、すべてを設計できるからこそ、多くの現場で選ばれてきた――それが私たちの強みのひとつです。

でも、これからの“食”は、効率性だけでは語れません。
美味しさ、健康、持続可能性…いくつもの価値が重なり合う今、何を優先し、どう届けるかが、より問われるようになってきています。

だからこそ、現場と一緒に、いちから“おいしさのつくり方”を見直していく。その実験と実証の場として、「Co.LAB∞」が生まれました。

 

■食をひらく “実験室”、Co.LAB∞の現在地

 

東京本社に併設された「Co.LAB∞(コラボエイト)」は、調理と開発、そして発信が自然につながる“実験室”のような空間です。

キッチンには過熱水蒸気オーブンをはじめとした中西製作所の主力機器が並び、すぐそばには、試作品を囲んで議論できる共有スペースやセミナールームがあります。
レシピの開発から試食、調整、提案までを、ワンフロアの中でシームレスに進められるのが大きな特徴です。

ここでは、「実際に調理して、その場で話す」ことが日常になっています。カタログや図面だけでは見えてこない“おいしさの違い”を、関係者全員が手を動かしながら探る。
そんな場面が、この場所にはあふれています。

また、Co.LAB∞は、新たなテクノロジーとの接点としても機能しています。
3Dフードプリンターやロボットなど、これまで厨房に存在しなかった技術が少しずつ導入されはじめています。

中西製作所が長年培ってきた現場の知見と、外部パートナーによる斬新なアイデア。その掛け算から、新しい「食」の可能性が育っています。


■ソフトとハード、両輪で価値を届ける

 

中西製作所が手がける過熱水蒸気オーブンなどの業務用機器は、「温度」「時間」「蒸気量」「風量」といった加熱条件を細かく調整できる設計になっています。
学校給食や食品工場、外食チェーンといった「多くの人に、安定して美味しい食を届ける」現場での知見が、この設計のベースにあります。

しかし、どれだけ機器の性能が高くても、使いこなす環境が整っていなければ、その力は発揮されません。 どんな食材に、どんな調理工程が合うのか…その最適解は、現場によって異なります。

Co.LAB∞では、導入前の調理テストやメニュー検証を通じて、機器の設定条件、レシピ設計、現場での運用方法までを一体で検討します。調理研究担当や管理栄養士が自ら現場に立ち、実際に手を動かしながら最適な形を探っていきます。

私たちが届けているのは、機器という「ハード」だけではありません。使いこなしまでを含めた「ソフト」の提案まで含めて、はじめて中西製作所の付加価値になります。どちらか一方ではなく、両輪そろって初めて、本当に意味のある“おいしさ”が実現できると信じています。

■共創の先にある、ひとつ先の「おいしさ」

 

Co.LAB∞で日々行われているのは、「どうすればもっとおいしくなるか?」というシンプルで本質的な問いへの挑戦です。

同じレシピでも、加熱温度や蒸気量、風量のわずかな違いで、仕上がりは大きく変わります。私たちはその“違い”を感覚任せにせず、データや条件として整理し、誰が調理しても再現できる方法を探っています。 

特に業務用の現場では、「誰がつくっても、同じようにおいしく仕上がること」が欠かせません。そのため、単に機器を納品するだけではなく、レシピの微調整や導入時の調理テスト、運用方法の設計までを含めてご提案しています。

お客様と同じ場所に立ち、実際に調理しながら味を確かめる。その積み重ねこそが、これまでにない“ひとつ先のおいしさ”を生み出す鍵だと、私たちは信じています。

 

■ 部門を超えて挑戦がめぐる、いまの中西製作所

 

Co.LAB∞は、「食の未来をつくる実験室」であると同時に、社員一人ひとりの挑戦が自然に生まれる職場でもあります。


たとえば、中西製作所の本社ではフリーアドレス制を導入。
役員も若手社員も同じフロアで働くことで、部署を越えた連携が日常的に起こり、Co.LAB∞でもその風通しのよさが活かされています。
調理テストや試作品の試食を通じて、開発・営業・経営企画など多様な部門のメンバーが、実際の現場でアイデアを出し合う光景は珍しくありません。



若手社員が早い段階から挑戦の場を得ているのも、中西製作所らしい特徴です。

管理栄養士として培った知識を活かして調理研究に携わる社員、異業種から転職して“食のインフラ”という言葉に可能性を感じたメンバーなど、それぞれの経歴や想いが、今の中西製作所をかたちづくっています。

2018年の社長交代以降、会社は大きな変化の渦中にあります。
共創や実証に重きを置く方針のもと、Co.LAB∞のような挑戦的な拠点が生まれ、ベンチャー企業との協業や新たな事業開発にも積極的です。

「誰かがつくった未来に合わせるのではなく、自分たちでつくっていく」。
中西製作所が目指す“社会インフラ企業”とは、そんな一人ひとりの意志の集合体なのかもしれません。

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くらだしマガジン編集部

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