需給が計画通り進まず在庫が膨らんだワイン、ラベルが剥がれただけのワイン。
どれだけ丁寧に造り、丁寧に運んでも、通常の販売先だけでは消化しきれないワインは出てしまいます。フードロス削減に向けて企業とクラダシが一緒に進めている取り組みを紹介する協業事例、今回は海外の生産者からワインを輸入し、小売店や飲食店などに提案しているワインキュレーション株式会社です。同社で取り組みを担当する大津龍平さんに、ワインが通常の販売先に出せなくなる理由と、そのワインをKuradashiで販売するまでの工夫を伺いました。記事の最後では、クラダシ側の担当である多田にも話を聞いています。
企業と担当者のご紹介
東京都中野区。海外の生産者からワインを輸入し、自社の通販サイトや、スーパーなどの小売店、飲食店などに提案している。

大津 龍平さん
ワインキュレーション株式会社。2022年にキリンホールディングスに入社し、キリンビバレッジにて営業を経験。その後社内公募にて、2024年10月にグループ会社であるワインキュレーションに異動。「ワインをもっと気軽に飲んでほしい」という思いで、クラダシとの取り組みを担当している。

多田 慎之介さん
株式会社クラダシ。ワインキュレーションとの取り組みを担当し、2026年1月のスパークリングワインのキャンペーンを企画した。
この記事の目次
輸入ワインは、販売から前倒しで発注する必要がある
まず、ワインが通常の販売先に出せなくなるのは、どんなときなのでしょうか?
大津:私たちは海外の生産者からワインを輸入して、自社の通販サイトや、スーパーなどの小売店、飲食店などに提案しています。こうしたお店を通じて、ワインをお客様に購入していただいています。
難しいのは、発注から販売までに時間がかかることです。ワインは輸入商材のため、販売から前倒しで発注をかける必要があります。たとえば9月に販売する商品なら、遅くとも4月には発注しておかないと間に合いません。ここがワインビジネスの特徴です。ワインは輸送期間が長いため、販売計画に基づいて事前に輸入を行います。一方で市場環境や販売状況の変化により、商品によっては当初の販売計画と差異が生じる場合があります。
スパークリングワインは、クリスマスや年末年始など人が集まるイベントや時期に需要が高まります。スーパーもECサイトも、需要が最も高まる12月に販売促進を行うため、私たちも12月に向けて多めに仕入れます。スパークリングは最盛期の12月を過ぎると、需要が落ち着きます。
もうひとつが、ラベルの剥がれやボトルの傷です。ワインは海外から船で運びますので、どれだけ気をつけても、一部にはラベルの剥がれや傷が出ます。これはワインに限らず、輸入品に共通する事情だと思います。
販売計画が変更になった場合は、販売を予定していたワインが倉庫に残ることがあります。そうしたワインを、保管コストの観点からもなるべく早めに購入していただける販売先を探すことが大切です。
Kuradashiで販売しているのは、どのようなワインなのでしょうか?
大津:私たちがKuradashiで販売しているのは、ラベルの剥がれなど外観に理由があるワインや、販売計画の変更によって在庫が一時的に膨らんだワインです。
ワインには賞味期限がありませんので、Kuradashiにご相談するタイミングは私たちが判断しています。クラダシさんに依頼するタイミングは、販売計画が変更になり、過剰在庫のリスクがあると判断する場合がほとんどです。
稀に保管期間が長い商品に関しては、ご提案の前に酒質の確認を行い、品質管理に万全を期しています。輸送の状態によって個体差が出ますので、輸入した単位ごとに確認してから提案しています。ここは、ロスワインだからこそ手を抜けないところだと思っています。
クラダシとの取引を決めた背景
クラダシとの取引は、どのような背景で始まったのですか?
大津:ご縁があってクラダシとつながったのがきっかけです。ワインは輸入品なので、ラベルに傷があるものが、一定数出ます。その話をしたときに、クラダシのビジネスのやり方や考え方が私たちと一致して、「まずはやってみよう」と始まったと聞いています。
一方で、ワインはブランドイメージがとても大切な商品です。ですから、大切にしていたのは、ワインのブランドに配慮した販売の仕方でした。Kuradashiは、商品ページにワインが出品された理由を明記したうえで、フードロス削減に賛同する会員の方に販売する仕組みです。商品の背景を伝え、フードロス削減に共感する方に購入していただく。その考え方が私たちの思いと合っていたのだと思います。
社内では、この取り組みはどのように受け止められているのですか?
大津:クラダシの仕組みと取り組みをきちんと説明したことで、実際にワインを輸入している社員にも納得してもらえました。始めてみると、社内では「ロスを一緒に減らしていく取り組み」として受け止められるようになりました。
今では、輸入担当も含めて、販売計画が変更になり、過剰在庫のリスクが生まれた際は「これはクラダシさんで販売できるのではないか」という言葉が自然に出るようになっています。私の担当だけではなく、会社全体で「クラダシさん」という名前が出る。この状態になるまでには、先輩たちが代々続けてきた取引の積み重ねがあったのだと思います。
スパークリングの魅力を伝える、1月のキャンペーン
一緒に進めてきた取り組みの中で、特に印象に残っているものは何ですか?
大津:いろいろあるのですが、ひとつ挙げるなら、2026年1月に実施したスパークリングワインのキャンペーンです。多田さんが企画してくださいました。
先ほどお話ししたように、スパークリングは最盛期の12月を過ぎると需要が落ち着きます。需要が落ち着いたものは、販売先を慎重に検討する必要がありました。それが今回は、1月に「スパークリングワインを救え!」というキャンペーンにして、クラダシの会員の皆さんに販売していただきました。需要が落ち着いた商品を、値引きだけで売るのではなく、「なぜ1月にこのワインを販売するのか」という理由を伝えて販売できたことは、私たちにとって本当にありがたかったです。
スパークリングワインの拡売自体は、ほかの販売先でも可能です。クラダシさんとの取り組みでは、需要が落ち着く時期にも、その商品がKuradashiに出品された理由やワインの魅力を伝えて販売していただいています。Kuradashiのお客様がKuradashiに求めているのも、まさにこういうところだと思います。
年が明けてすぐの1月に販売できたことで、早期に在庫が適正化されました。社内にとっても嬉しいニュースで、「であれば、こういう商品もある」という話が次々に出てきたのを覚えています。
銘柄ごとに数本ずつ出るワインを、詰め合わせセットで販売
定番になっている「ロスワインおためしセット」も、そうしたワインから生まれたのでしょうか?
大津:はい。あのセットは、私たちの取り組みの中心にあるものです。
少しの傷やラベルの剥がれで通常の販売先に出せなくなるワインは、1つの銘柄あたり数本単位で発生します。ある程度の本数がない場合、販売先を見つけること自体が難しいです。私たちはワインに愛情を込めて輸入・営業活動をしていますので、ほんの少しの傷が入っただけで取り扱っていただけないことは、本当に切なく、もったいないと感じていました。
Kuradashiの「ロスワインおためしセット」は、そうしたワインを、銘柄を指定しない詰め合わせとして販売するものです。どの銘柄が入るかを事前にお知らせしない形であることを、お客様にご了承いただいたうえで販売しています。銘柄を指定しないからこそ、数本ずつ出てくるワインも、まとめて販売できる。通常の販売先に出せなくなったワインを、この商品の価値を認めてくださるお客様に購入していただけることが、この取り組みの一番の良さだと思っています。
定期的に購入してくださるお客様も多いと思いますので、今後も続けていきたいです。開けてみたら知らない産地のワインが入っていて、それがおいしかった。そうやって知らなかったワインを飲む機会が、ワインを気軽に楽しむきっかけになればうれしいですね。
定例の打ち合わせで在庫を共有し、販売までを短縮
一緒に取り組みを続けていくうえで、日頃はどのようなやり取りをされているのですか?
大津:2週間に1回、定例の打ち合わせをしています。売上の進捗を共有して、次の企画をすり合わせる場です。良い点は2つあって、ひとつは、売上の状況と、お互いに困っていることを定期的に話せる場があること。もうひとつは、提案から販売までの速さです。
Kuradashiにご相談するワインの種類や数量は、日々変わります。「こういう商品が出たので提案したい」とその場でお伝えすると、多田さんがすぐに商品を登録して、販売まで進めてくださいます。本来なら1〜2か月かかるところが、すぐにKuradashiに並びます。早く販売できることで私たちの在庫リスクも解消されますので、この速さにはいつも助けられています。
食品とのセット企画や試飲会で、ワインの魅力を伝えたい
これから一緒にやってみたいこと、そしてKuradashiでワインを購入する方へ伝えたいことは何でしょうか?
大津:やってみたいことは、ロスワインと、Kuradashiにあるほかの食品を組み合わせた企画です。ワインを単体で購入していただくだけでなく、フードロスの観点から食品との組み合わせを提案できる場になれば、Kuradashiで購入していただく価値がもっと広がると思っています。それから、どういうお客様が購入してくださっているのかを踏まえて、試飲会や「Kuradashiで買うと特典がつく」といった、実際に体験していただける場までつなげたいですね。
伝えたいことは、造り手のことです。ワインを担当して2年になりますが、この商材の魅力は、生産者やぶどうを育てている方が、強い思いを持って造っているところです。そうしたワインの中にも、輸送や製造の段階のわずかな傷やラベルの剥がれだけで、お客様に販売されずに終わるものが一定数発生しているのが実情です。
そういうワインがあることに共感していただいたうえで購入していただければ、私たちも嬉しいですし、何より造り手が一番喜ぶと思います。ワイン専門店で購入していただくのももちろん良いのですが、Kuradashiでワインの味を知って「ワインっていいな」と思っていただけたら、それが一番です。
大津さん、ありがとうございました。
クラダシの担当者から見た、ワインキュレーションとの取り組み
クラダシの担当として、ワインキュレーションとの取り組みをどう見ていますか?また、これから一緒に進めたいことは何ですか?
多田:「ロスワインおためしセット」が、ワインキュレーションさんとの取り組みの中心だと思っています。銘柄を固定するのは難しいのですが、ラベルの剥がれや傷などで通常の販売先に出せなくなった商品を、出てきたときにそのまま販売できる点が助かると、大津さんから何度も伺っています。ワインキュレーションさんの在庫の課題を解決しながら、お客様にはお得に購入していただける。この形は大切にしていきたいです。
1月のスパークリングのキャンペーンも、一時的に在庫が膨らんだ商品を販売するのはクラダシの役割ですし、お客様も求めていることでした。大津さんから日頃「ワインの魅力を伝えながら販売したい」と伺っていたので、なんとなくセールをするのではなく、スパークリングワインの魅力と、ワインもフードロスになることがあるという事情を一緒に伝えられました。取り組みとしても面白かったですし、やってよかったと思っています。
これからのことでいうと、定例では売上の進捗を共有しながら次の施策をすり合わせていて、ロスワイン定期便の利用を増やすことで、販売をもっと伸ばせるのではないか、という話もしています。スパークリングやロゼのように、ワインもフードロスになり得るということは、これからも発信していきたいです。もうひとつ、若い方を中心にワインを飲まない方が増えているとも伺っています。フードロスをきっかけにワインをご紹介しているので、ワインの魅力そのものも感じていただける取り組みを一緒に作っていきたい。フードロスの問題と、造っている方や販売している方の思い。どちらにも優劣をつけずに伝える販売を続けていきます。


