料理を作る際「美味しくない」「硬くて食べにくい」といった理由で、野菜の皮やへたなどを廃棄していませんか?実は、野菜の皮やへたなどを余すことなく活用できる方法があります。
その方法が「ベジブロス」です。ベジブロスは野菜の皮やへたなどから作った出汁のこと。本記事では、ベジブロスを作るメリット、作り方、料理に活用する方法などをご紹介します。
ベジブロスとは野菜の皮などで作る出汁
ベジブロスとは野菜の皮やへた、芯などを煮て作る出汁(ダシ)です。語源は英語で、ベジタブル(野菜)とブロス(出汁)を組み合わせた言葉。日本では1980年代に認知されはじめ、SDGsやフードロス削減が謳われるようになった近年、その認知はさらに広がってきています。これまで当たり前のように捨てていた野菜の皮やへたを有効活用できる方法として、すでに取り入れている方も多いかもしれません。
*参考:野菜を丸ごと「ベジブロス」
ベジブロスを作るメリット
一般的に料理に使う出汁は鰹節や昆布、鶏や豚肉から取られますが、あえてベジブロスを利用することにはどんなメリットがあるのでしょうか。
1. 野菜に含まれる栄養価を無駄にしない
ベジブロスを作ると、野菜に含まれる栄養価を無駄にしません。野菜の栄養素は、皮や芯にも含まれています。日本食品標準成分表(文部科学省、2016年)では、人参100gに含まれる栄養素の違いがわかります。
栄養素 | 根・皮付き・生 | 根・皮むき・生 |
炭水化物 | 9.3g | 8.5g |
食物繊維 | 2.8g | 2.4g |
カリウム | 300mg | 270mg |
カルシウム | 28mg | 26mg |
ビタミンA総量 | 19,520μgRAE | 18,890μgRAE |
人参の皮がある方が、ない場合より「炭水化物」「ビタミンA」などの栄養素がやや多く摂れることがわかりますね。皮をベジブロスにすると栄養が出汁に流れ出るため、無駄になりません。
*参考:日本食品標準成分表
2. 健康維持につながる
実は普段から廃棄することが多い皮や芯、根っこには「ファイトケミカル」と呼ばれる成分が豊富に含まれています。ファイトケミカルは「免疫細胞」の働きを強めたり老化の原因である「活性酸素」の働きを抑えたりします。
ハーバード大学医学部元准教授で麻布医院の院長を勤める高橋弘氏も、からだの免疫を強くするために摂りたい栄養素としてファイトケミカルを挙げています。そのため、野菜の皮や芯、根っこを普段の食事に取り入れることで、健康の維持につながるでしょう。
*参考:日本経済新聞, イマジン・グローバル・ケア株式会社
3. 肌を守る
野菜の皮や芯、根っこには、私たちが普段食べている部分よりも多くの「ポリフェノール」や「リコピン」などが含まれています。
野菜のポリフェノール酸化酵素の部位別活性と熱感受性による研究(日本デルモンテ株式会社、2003年)では、大根、人参、玉ねぎのいずれも果肉部分より皮部分の方が多くのポリフェノールが含まれていることがわかりました。
ポリフェノールやリコピンには抗酸化作用があるため、肌を守りたい方におすすめです。
*参考:朝日新聞, 野菜のポリフェノール酸化酵素の部位別活性と熱感受性, 日清オイリオグループ株式会社
4. 野菜を余すことなく使い切れる
ベジブロスは、これまで廃棄してきた野菜の皮や芯などをまるごと使えます。
農林水産省による食品ロス量の推移(農林水産省、2019年)によると、家庭から出るフードロス量の推計は261万トンもあることがわかりました。ベジブロスを作る方が増えれば、野菜を余すことなく使い切ることが可能です。
*参考:農林水産省
ベジブロスを作る際の注意点
ベジブロスに興味があっても、美味しく作れるか不安を感じている方もいるかもしれません。ベジブロスをせっかく作るなら、美味しい方が続けられるでしょう。そこで、美味しいベジブロスを作りたい方は、これから紹介する2つの点に注意してください。
1. ベジブロスに向いていない野菜もある
実は、すべての野菜がベジブロスに向いているわけではありません。以下のような野菜でベジブロスを作ると、美味しく調理できない可能性があります。
特徴 | 野菜 |
匂いが強い野菜 | にんにく、ニラ、らっきょうなど |
苦い野菜 | ブロッコリー、キャベツの芯、ゴーヤなど |
アクが強い野菜 | なす、大根、ほうれん草、小松菜など |
にんにくやブロッコリーなどは、いずれも「硫黄成分」を含むので臭みが出やすい野菜です。ブロッコリーやキャベツについては、苦みも出やすいので、芯は入れないようにしてください。また、じゃがいもやさつまいもを使うのは問題ありませんが、加熱しすぎるとドロドロになり飲みにくくなるので注意しましょう。
*参考:一般社団法人ホールフード協会
2. 残留農薬が気になるなら重曹や流水で洗う
健康意識の高い人は、野菜に農薬が残っていないか気になるかもしれません。野菜に「残留農薬」があるか気になる方は、調理する前に重曹や流水で洗いましょう。アメリカのコネチカット州で行われた農産物を流水で洗う実験(Connecticut Agricultural Experiment Station、2000年)では、12品目中9つの品目で残留農薬の減少が確認されています。
流水だけでも農薬が減少する理由は、多くの農薬が水溶性だからです。また、農薬の多くは「酸性」なので、重曹で洗う方法も効果があります。なぜなら「アルカリ性」の重曹が酸性の農薬と混ざると、中和されるからです。
*参考:Reduction of Pesticide Residues on Produce by Rinsing, 栄養士団体|健康栄養支援センター, AQUXIA-Technology事業部 produce by 株式会社永田製作所, 野菜に残留する農薬の除去に関する研究
ベジブロスの作り方を解説!
ベジブロスに興味があっても、どのように作ればよいのかわからず悩んでいませんか。ここからは、ベジブロスの作り方について解説します。ベジブロスを作る際には以下の材料を用意してください。
- 野菜の皮や芯、根っこなど(250gほど)
- 水1,300ml
- お酒小さじ1杯
たとえば、玉ねぎの皮やへた、人参の皮やへた、長ネギの青い部分、パセリの茎などを使いましょう。野菜だけでなく、果物を用意しても問題ありません。
材料を用意したら、大きい鍋に水と野菜のくずを入れてください。火にかける前に小さじ1杯のお酒を入れましょう。お酒を入れれば、野菜のうまみを引き出すだけでなく、臭みを消す効果があります。
次に強火で沸騰するまで火にかけてください。ふつふつと沸騰したら弱火に変えてそのまま20〜30分煮込みましょう。煮込み終わったら火を止めて、ざるを乗せたボウルでこしましょう。できたベジブロスを冷蔵庫に保存すれば数日は使えます。
*参考:All About 暮らし, ハウス食品株式会社
ベジブロスを使った料理例
作ったベジブロスはそのまま飲んでも問題ない美味しさです。そのベジブロスを出汁として使えば、料理の旨味をさらに引き出しやすくなります。そこで、どのような料理にベジブロスを使えるのかご紹介します。
1. カレーやシチュー
カレーやシチューを作るとき、水の代わりにベジブロスを使えば、野菜のうまみがよく染みこむので、より美味しくなるでしょう。
2. スープや汁物
ベジブロスを使って、スープや汁物を作ることができます。和洋中のどのスープや汁物にも利用できるので、料理の幅も広がります。
- 味噌汁
- オニオングラタンスープ
- 豚汁
- ミネストローネ
- ボタージュスープ
- クラムチャウダー
3. 炊き込みご飯
ベジブロスは炊き込みご飯にも利用できます。お米をベジブロスにつけて、ほかの調味料や具材と混ぜて炊飯するだけなので手間もかかりません。野菜の美味しさがまんべんなく浸透した炊き込みご飯を味わえます。
4. 玉ねぎの皮の水出汁
ベジブロスは料理だけでなくお茶の代わりとしても利用可能です。玉ねぎの皮(5個程度)を一晩1リットルの熱湯につけ置くだけで、かんたんに作れます。水で作る方法もありますが、より美味しい出汁を取るなら熱湯がおすすめです。玉ねぎのやさしい味を味わえます。
*参考:レタスクラブ © KADOKAWA CORPORATION
ベジブロスで栄養を摂りながら野菜を有効活用できる
ベジブロスは、本来なら廃棄する野菜の皮や芯などを余すこなく有効に使い、野菜に含まれる豊富な栄養素を取り入れることができるでしょう。
また、ベジブロスは、冷蔵庫で数日間は持つので(※)、カレーやスープ、お茶などさまざまな用途で利用できます。作り方も簡単なので、ぜひ一度作ってみてくださいね。
※適切な環境での保管・早期に使い切ることを心がけましょう。