日本国内では年間570万トン(2019年度)もの食品が廃棄され、深刻な問題となっているフードロス。賞味期限を延長したり、廃棄食材を使って新たな商品を開発したりと、企業や自治体でさまざまな取り組みが行われていますが、いま「サステナブルなお酒」が注目されているのをご存じでしょうか?
廃棄されるパンや果物を原材料として、焼酎やビールなどをつくることで、フードロスの削減に貢献しています。廃棄される特産品を、地域の中でお酒に生まれ変わらせることで、地域活性化にもつながっている「サステナブルなお酒」。
今回は、そんな全国各地のサステナブルなお酒についてご紹介します。
毎日お茶碗1杯分の食品を捨てている?深刻なフードロス問題
農林水産省によれば、2019年度のフードロスは570万トンでした。数年前と比べると減ってはいるものの、いまだ国民ひとりあたり毎日お茶碗一杯分のフードロスが発生しています。フードロスの削減はSDGsの目標の中にも組み込まれており、世界的に深刻な問題として認識され、さまざまな取り組みが行われています。日本でもフードロスの削減対策のひとつとして、廃棄予定の食材を原料にした商品開発が行われています。
まさに今、私たちにとって大事な「食」を持続可能なものにすることが求められています。
フードロスに関する基礎知識については、こちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
▼フードロスは“どこで”発生するの?いま知っておきたい基礎知識
*参考:農林水産省
廃棄食品を活用した「サステナブルなお酒」5選
昨今、フードロス対策で規格外野菜をつかった商品の開発や賞味期限の延長などが行われていますが、最近は全国の酒造メーカーが「サステナブルなお酒」をつくりはじめています。
サステナブルなお酒とは、廃棄される食品や食材を原材料としてつくったビールや発泡酒、焼酎などのことです。新しい酒造メーカーだけでなく、歴史ある老舗酒造メーカーでも製造されています。
ここからは、そんな「サステナブルなお酒」の中から今買える商品を5つご紹介します。
1. 横浜高島屋で販売している「RE:BREAD」
横浜高島屋の地下食料品街にある「ベーカリースクエア」では、40ブランド500種類以上のパンを揃え、毎日1万個以上を販売しています。
この「ベーカリースクエア」では、日々発生する売れ残り商品をできるだけ廃棄しないよう、これまでにも冷凍販売や廃棄商品のたい肥化など、環境に配慮した取り組みを行ってきました。横浜高島屋はこれらの取り組みに加えて、廃棄間近のパンを原材料とした発泡酒「RE:BREAD」を2021年8月18日より販売しています。
この発泡酒は、廃棄予定のパンを乾燥させて細かく砕き、糖化する過程で麦と一緒に加熱して製造。200本の発泡酒をつくる際に使う麦の使用量のうち、23%を廃棄間近のパンで代用することに成功しました。パンに合う苦みの少ない味わいを目指し、白ビールの一種である「ホワイトエール」に近い形で醸造している商品です。
2. シンガポールのフードテック企業発「CRUST Lager」
2019年にシンガポールで設立され、2030年までに世界の食品ロス1%削減を目指しているフードテックカンパニー「CRUST Group」。2021年2月に日本法人を設立し、国内のフードロス削減に向けて、さまざまな廃棄食品を飲料品に生まれ変わらせています。
その中のひとつが、廃棄予定のパンを原材料としたビール「CRUST Lager」です。芳醇なモルトとホップの風味、香ばしさがあり、どのような食事にも合うお酒です。
CRUST Japanの公式サイトから、通販で購入できます。
3. 鹿児島でつくられた「Fspirits -ストロベリー&カルダモン-」
イチゴの生産が盛んな鹿児島県志布志市。新型コロナウイルス感染症の拡大によって、飲食店でのイチゴの使用が減ったことで、多くのイチゴが廃棄されるようになりました。
市内の焼酎メーカー「若潮酒造」は、そのような状況に着目。「フードロスの削減と地域活性化に貢献できないか」と開発したのが、廃棄予定のイチゴをつかった「Fspirits」です。原材料はワイン酵母の芋焼酎とフードロスのイチゴで、アクセントにスパイスの女王である「カルダモン」を使用。砂糖や添加物を加えないため、イチゴ本来の甘みと色を楽しめるお酒に仕上がっています。
アルコール度数もそこまで高くなく、ソーダ割りにすればお酒が苦手な人でも楽しめます。
公式のオンラインショップで購入可能です。
地域活性化に貢献する「サステナブルなお酒」
ここまで見てきた「サステナブルなお酒」はフードロス削減に一役買っているだけでなく、地域活性化にも貢献しています。
たとえば、福島県会津若松市では、トマト農園がビールづくりで生じる粕と廃棄トマトやフルーツを活用したビールづくりに挑戦中。バーやボトルショップを併設したブリュワリーもつくることで、地域の観光施設としても活用することを目指しています。
また、期間限定でさまざまなプロジェクトも実施されています。千葉県では、柏市のワイン業者と船橋市の農家が規格外の梨をつかったリンゴ酒「シードル」を開発・販売しました。
石川県金沢市でも、地ビールを製造する金沢ブルワリーが「アップリカ」という発泡酒を開発・販売。沖縄県では地元のビールメーカー・オリオンビールが、熟しすぎたマンゴーをつかったチューハイを期間限定で販売していました。
もともと廃棄する予定だった野菜や果物がお酒に生まれ変わることで、農家にも新たな収入源が生まれ、地域経済の活性化につながる「サステナブルなお酒」。現在、国としても「地方創生SDGs」を掲げ、持続可能な街づくりを目指しているため、今後も地域の廃棄食材を活用した新商品の開発は増えていくのではないでしょうか。
各地の味をたのしみながら、フードロスに貢献しよう
廃棄食材を使ってつくられたサステナブルなお酒は、廃棄される地域の特産品を用いているからこそ、全国各地の味を楽しみながらフードロス削減に貢献できるのがポイントです。インターネットで買える商品も多いため、自宅にいながら環境保全と地域経済に貢献できます。
一方で「お酒」という観点からフードロスを考えたとき、実は品質に問題がないのにも関わらずコルクやラベルの傷、在庫の滞留などによって廃棄されているワインの存在も大きな問題となっています。
社会貢献型ショッピングサイト「Kuradashi」では、そのようなワインを「ロスワイン」として取り扱っており、毎月5000円〜1万円のコースから選べる定期便も行っています。Kuradashiで販売しているロスワインは定価の半額以下で購入可能です。
▼Kuradashiで扱っているワイン
https://kuradashi.jp/collections/alcohol-wine
「おうち時間」を楽しむアイテムのひとつとして、ぜひ購入を検討してみてはいかがでしょうか?