食の楽しみ方を変える最新技術を紹介 フードロスや温室効果ガス対策にも

食の楽しみ方を変える最新技術を紹介 フードロスや温室効果ガス対策にも

近頃の冷凍食品は、種類も豊富で美味しくなったと感じる方も多いのではないでしょうか。これは、各食品メーカーの技術と品質へのこだわりが冷凍食品を進化させてきたからです。

実は、冷凍食品だけでなく生鮮食品のコーティング技術や輸送技術も日々進化しています。今回は、食品保存・輸送の最新技術のほか、人気の冷凍食品についてもご紹介します。

最新の食品保存技術とは

普段、お弁当や食卓で口にする食品の保存には、さまざまな技術が用いられています。ここでは、最新の保存技術をご紹介します。

「CAS凍結」が食品の鮮度を保つ!

「CAS凍結」は、冷凍食品の未来を変える技術として注目されています。CAS凍結は、急速冷凍する過程で微弱なエネルギーを付加し、食品の味や食感を損ねることなく急速冷凍を実現します。

これまでの冷凍技術では、解凍後に肉や魚のドリップや野菜などの食材から水分が出てしまう離水が原因となり、栄養価・味・食感を低下させていました。ドリップや離水の原因は、食材を凍らせるときに細胞の中の水分が氷となり細胞を傷つけてしまい、食材の外に栄養分と一緒に出て行ってしまうこと。そこで開発されたのがCAS凍結です。

CAS凍結では、微弱な磁場と電流によって細胞の中の氷が大きくならないように制御することで、細胞を傷つけずに食材を冷凍させます。

これまで作り置きが不可能であった食品の冷凍保存が可能になり、食材の下準備作業などに追われる飲食店の職場環境改善や作りすぎによるフードロス削減への貢献が期待されます。

*参考:CASエンジンについて医療分野でも活用される冷凍技術

自然から学んだシルクコーティング技術

Benedetto Marelli(ベネデット・マレリ)氏は、シルクを用いた生鮮食品の賞味期間を延長する新技術を開発しています。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の准教授でもあるベネデット氏は、ある時、シルクを使った料理イベントに参加した際に、誤ってシルクを塗ったイチゴを机の上に放置してしまいました。その一週間後、シルクを塗ったイチゴは、驚いたことにまだ食べられる状態だったのです。

この発見をきっかけに、シルクコーティング技術を用いた生鮮食品の賞味期間延長に挑戦。研究の結果、シルクコーティングは、青果をカットしたもの、まるごとの野菜、肉や魚などの保存性を最大2倍に高めることがわかりました。

果実や野菜の保存料にはこれまで次亜塩素酸ナトリウムが用いられてきましたが、これは臭いや味に影響を与えるため、食べる前に水洗いする必要がありました。

一方で、シルクコーティングはシルクから分離させたタンパク質を利用するため、味や臭いに影響はなく、そのまま食べることができます。シルクはもともと蚕の繭からつくられる自然由来の素材です。このタンパク質をコーティング剤として、既存の食品加工ラインに組み込むことで、製品の劣化を防ぐことが期待されています。

ベネデット氏らは、シルクコーティング技術が「フードロス削減」「プラスチック容器やフィルムの削減」「輸送中の温室効果ガスの削減」に貢献できるとして、その可能性を追求しています。

*参考:MIT startup wraps food in silk for better shelf life脱プラで野菜や果物の鮮度をどう保つ?食品ロス削減、米国・日本の新技術とは

物流の技術がフードロス削減に貢献!

これまで冷蔵・冷凍の食材・食品の輸送といえば、空路やトラックが一般的でした。しかし、「氷感SO庫」は、北海道から九州まで生鮮食品の鮮度を維持する鉄道での冷蔵・冷凍輸送を可能にしました。

氷感SO庫の特長は、次の3つです。

  • 凍結させずに長時間の鮮度維持が可能
  • 肉や魚は熟成効果でうま味が増す
  • 蓄電池を搭載し、トラブルに対応可能

さらに、全国に輸送できるため、これまで保存が難しかった食材・食品販売の全国展開が可能になります。これにより、生産者側での無駄な食品の廃棄も減り、フードロス削減に貢献します。

温度によって保存日数は変わりますが、氷感SO庫の効果事例では、いちご(通常保存期間:5~6日)は10~20日、ホウレン草(通常保存期間:3~4日)は14~30日、牛肉(通常保存期間:3~5日)は20~90日(熟成も可能)となっています。

このように、保存技術だけでなく輸送技術も食材・食品の賞味期間を延長させ、私たちの食生活を支えてくれています。

*参考:氷感SO庫

身近で人気の冷凍食品を紹介

最近の冷凍食品が美味しくなったと言われるのは、冷凍食品メーカーが多様化する消費者のニーズに応えるために、食材や味にこだわった新商品開発に力を入れた結果といえるでしょう。

マルハニチロ株式会社が行った「冷凍食品に関する調査 2021」によれば、「自身で調理するより美味しい」と思う冷凍食品は、1位が「焼き餃子」、2位が「チャーハン」、3位が「から揚げ」となっています。

そんな冷凍食品について、冷凍食品メーカーの食材や味へのこだわりをご紹介します。

不動の人気 「ニチレイの本格炒め炒飯」

自宅でパラっとしたチャーハンを作るのに苦労した方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんなチャーハンを冷凍食品として発売したのが、「ニチレイの本格炒め炒飯」です。醤油の香ばしさやふっくら感がありながらパラパラの本格炒めチャーハンには、家庭では真似できないポイントがあります。

250℃以上の高温熱風によって余分な水分を飛ばす高火力調理を用いているほか、自社製焼豚とその煮汁を使用することで、より深い味わいと焦がしネギ油の香ばしさが増す仕上がりになっています。

食材に至っては、北海道の一等米を100%使用しています。また、焼豚のゴロゴロ感などにもこだわり、商品の改良を続けています。

*参考:ニチレイの本格炒め炒飯

日本一売れている「味の素のギョーザ」

日本一売れている味の素のギョーザは、18年連続で販売数1位、その売上は年間200億円にもなります。その味の素のギョーザといえば、油、水なしで調理ができるのはご存知の方も多いはず。

しかし、それだけではない素材へのこだわりがあります。キャベツは季節に合わせて旬の産地から仕入れ、カットサイズにもこだわり、しっかりとした食感が楽しめるよう工夫しています。

また、豚肉の繊維を崩さないよう独自製法でミンチにし、部位によっては刻み方を変えるこだわりが、豚肉をジューシーな仕上がりにしています。その他にも、ニラやギョーザの皮へのこだわりが、一つのギョーザの中に詰まっています。

*参考:味の素のギョーザ

食を楽しみながらフードロス削減を

フードロス削減に貢献するために、食べ残しをしない・食材を必要以上に買わないことも解決方法ではあります。とはいうものの、私たちは「食」を大事にして、何より楽しみたいと思っています。

今回は、最新の保存技術や輸送技術によってフードロス削減だけでなく、プラスチック容器やフィルムの削減・輸送中の温室効果ガスの削減が期待されていることをご紹介しました。

このような技術が私たちの食生活を支えています。また、メーカーの味や品質へのこだわりによって冷凍食品は美味しいと感じる人が増えてきました。実際に高級食材や高級食品にも冷凍技術が活用されるようになり、料亭やレストランでも冷凍食材の使用が増えています。

これまで冷凍食品は美味しくないと敬遠されていた方も、この機会に食に対する選択肢の幅を広げてはいかがでしょうか。

*参考:農林水産省, 日本食糧新聞

くらだしマガジン編集部

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