世界各国で問題になっている食品ロス。日本でも多く発生していますが、国や食品業界だけの問題だと捉え、身近なことに感じられない方も多いのではないでしょうか。
食品ロスは家庭でも発生している身近な問題です。そのため、1人ひとりが普段の行動を変えていけば食品ロスの削減に直結します。
この記事では、食品ロスの原因や問題点、削減に向けた取り組みについて解説します。食品ロスの現状がわからない方や、食品ロス削減のためにできることを考えている方はぜひ参考にしてください。
食品ロスとは
私たちが生きていくうえで食べ物は欠かせません。食料は生産され、調理し、私たちが食すことで消費します。
食品ロスとはその過程の中で、本来食べられるのに捨てられてしまっている食品のことを指します。
先進国では特に毎年多くの食料が生産されていますが、生産されたものがすべて消費されているわけではなく、余ってしまったものは廃棄されているのです。人の手によって生まれた食品ロスは、日本をはじめ世界各国で問題視されています。
食品ロスになる原因
人が作り出している食品ロスの主な原因は、食べ物を食する消費者の食べ残しや手つかずの食品、調理中の皮の剥きすぎなど生活の身近なところから発生しています。
また、日本特有の賞味期限に対する意識が強いことで誕生した「3分の1ルール」という食品業界の慣例も大きな原因の1つです。
「3分の1ルール」とは、製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつ均等に分け、最初の3分の1の期間に納品しなければいけないという商慣習で、食品メーカー・卸業者・小売業者の間の流通過程でルールが設けられています。
賞味期限の3分の1を超えて納品が遅れた商品は、賞味期限まで日数に余裕があってもメーカーに返品・廃棄されてしまいます。
世界中の食品ロスの原因はさまざまですが、日本は「3分の1ルール」による食品ロスの発生が多いのが特徴です。
食品ロスの現状
食品ロスは日本のみならず世界中で重要視されている問題のため、それぞれの国に食品ロスの削減に向けた取り組みが必要とされています。
食品ロスを軽減させるには、食べ残しや売れ残りなどの理由でまだ食べられる食品がどのくらい廃棄されているのか現状を把握し、対策を考えることが大切です。そこで、以下では日本国内と世界の食品ロスの現状を解説します。
日本の現状
日本では、令和2年度推計で食品ロスが約522万トンも発生しています。そのうち食品関連事業者から発生する事業系が約275万トン、一般家庭から発生する家庭系が約247万トンです。
国民一人当たり、毎日お茶碗一杯分が捨てられていることと同じ値であるだけでなく、この数値は世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量の約1.2倍にあたります。
日本の食品ロスだけで世界の食料支援量を上回っているという現状を重く受け止め、早期に改善する必要があるでしょう。
世界の現状
世界では毎年約40億トンもの食料が生産されています。しかし、食品ロスを含む食品廃棄物は約13億トンにものぼり、生み出された食料の約30%が廃棄されてしまっているのが現状です。
身近なことに置き換えると、食料品の買い物で3,000円分買ったとして、そのうちの1,000円は無駄になっているということになります。日本と同様に、世界の食品ロスの量も早期改善が必要です。
食品ロスの問題点
食品ロスが増えることは、人だけでなく地球にもダメージを与えるなど、さまざまな悪影響を及ぼします。具体的にどのような影響を及ぼすのか、以下で食品ロスによって起こっている主な問題点について詳しく解説します。
地球温暖化の原因になっている
人々の生活や自然の生態系にさまざまな影響を与える地球温暖化。一見、関係ないように感じる食品ロスと地球温暖化は密接に関係しています。
食べられないからといって捨てられた食べ物の多くは可燃ごみとして焼却処分されており、燃やす際に灯油などの燃料を使うことで、二酸化炭素などの温室効果ガスが発生します。この温室効果ガスが地球温暖化の大きな原因となっているのです。
また、燃えにくい生ごみなどの場合は通常よりも燃料が多く必要となるため、温室効果ガスを促進させることにもつながります。
食品ロスや食品廃棄物の処理によって発生した温室効果ガスは、世界全体の温室効果ガス排出量の約8%を占めており、地球温暖化を進行させる原因の一つとなっているのです。
資源の無駄
食料が作られる田畑や牧場、工場などでは水など多くの資源が使われています。つまり、多くの資源を使って作られた食料を無駄にしてしまう食品ロスは、同時に資源も無駄にしているといえるでしょう。日本では水道水が飲めるくらい水が豊富にありますが、世界ではきれいな水を確保しづらい国や地域もあり、水は貴重な資源となっています。
また輸入品の多い日本で食品ロスの発生が多いということは、大切な海外の水資源まで無駄にしてしまっていることにもつながっているのです。
税金の問題
食品ロスが与える影響は国民が納める税金にも及んでいます。人々が何気なく捨てているごみはタダではなく、ごみの処理で発生する燃料代や人件費、焼却設備の整備代などには多額の費用がかかります。
家庭ごみである一般廃棄物は自治体が回収や処理を行っており、処理にかかる費用を賄っているのは税金です。一般廃棄物にはもちろん食品ロスや食品廃棄物も含まれています。
2019年度の環境省の調査によると、食品廃棄物の処理に使われた税金は約7,800億円で、そのうち食品ロスの処理に使われた税金は約1,800億円と、かなりの額の税金が使われていることが分かるでしょう。
食品を捨てることはお金を捨てることと同じですが、逆をいえば食品ロスの削減は税金削減にもなり得るのです。
食品ロス削減のための具体的な取り組み
日本や世界の食品ロスの現状を理解したところで、食品ロス削減のための対策が必要ということが理解できるでしょう。人々の生活や地球を守るためにも、食品ロスによる悪影響は抑えるべきです。
日本では食品ロスの削減に向けたさまざまな取り組みが行われています。どのような取り組みがされているのか、事例も踏まえながら具体的にご紹介します。
地方公共団体が行う取り組み
住民への啓発や地域の民間団体、学生と連携して取り組む地方公共団体も食品ロス削減に向けた取り組みをしています。主な取り組みとしては、住民、消費者への啓発には食品ロス削減マイスター養成講座の開催や、ごみ減量キャンペーン、エコクッキング動画による啓発などが挙げられます。
子どもへの啓発や教育に向けて、ご当地ヒーローによる食品ロス削減の啓発や食品ロス削減啓発オリジナルカードゲームの作成など、楽しいコンテンツを発信しているのも特徴です。
さらに、フードバンク活動と連携したもったいない市の開催や、食品ロス削減プロジェクトの実施などのイベントも行われています。
民間等が行う取り組み
民間団体も食品ロス削減につなげるサービスを展開するなど、社会貢献活動を通して食品ロス削減に取り組んでいます。
食品棚「てまえどり」でのキャンペーン実施や、フードロスチャレンジプロジェクトの「つれてって!習慣」、「エコレシピ」配布、持続可能な社会の実現に向けた「食品廃棄物半減」の取り組み、ロングライフ製法でおいしさを長持ちさせた食品ロス削減の実施、賞味期限延長の実現などが主な取り組みです。
大手企業と共同で活動している事例も多く、消費者がより身近で分かりやすく楽しく食品ロス削減ができるように、イベントを交えた情報発信を行っています。
生徒・学生が行う取り組み
日本の未来を担う生徒や学生も、食品ロス削減の取り組みに貢献しています。食問題に関心を持つように実施された料理レシピコンテストや、捨てていた部分の価値や活用方法に気づいてもらい、捨てずに活用できるレシピ等を発信したり、学校行事の中止によって行き場を失った野菜などを学校で配布したりするなど、学校という場を活用した取り組みが盛んです。
年齢が若い頃から食問題や食品の大切さを知ることは、食品ロスを増加させないためにも大切なことです。また、子どもが食品ロスに対して関心を持っていることが、大人が食品ロスの知識を深めることを促進させ、さらなる削減に向けての取り組みにつなげられるでしょう。
食品ロス削減のために日常の生活でできること
ここまで主に団体による食品ロス削減に向けた取り組みをご紹介してきましたが、1人ひとりの日常生活のちょっとした配慮でも食品ロスの削減はできます。食材の買いすぎを防ぐために、買い物する前に冷蔵庫の中身を確認したり、商品を手に取る前に食べきれるか確認したりしてみてはいかがでしょうか。
また、長期間保存できるよう適切な保存方法を調べてみたり、作りすぎて食べ残しとならないように、保存期間までに食べられる分だけ作ったりすることも効果的です。
ほかにも、冷蔵庫の中の配置を工夫して整理することで食材の長期放置を防いだり、過剰除去を防ぐために調理技術の向上に向けて練習したりすることも食品ロス削減につながります。
いかに手に入れた食品を捨てずに美味しく食べるかがポイントで、国民1人ひとりが取り組めば、得られる効果は大きくなるでしょう。
食品ロス削減に向けたさまざまな取り組みを知ろう
食品ロスは、世界でも重要視されている近年の改善すべき問題です。日常的な生活でも原因を作っているため、国や企業など大きな規模で解決するだけでなく、1人ひとりの意識の改善が重要であることが分かります。
少しの行動の変化で食品ロス削減につなげられるため、まずは1つでもできることから始めてみましょう。「Kuradashi」では、毎日の買い物がお得に済ませられるだけでなく、商品の購入が社会貢献にもつながります。
美味しくいただける食品が多数販売されているため、食品ロスの削減として積極的に活用しましょう。