食品ロスは、持続可能な世界を作るうえで解決すべきとして注目されている、地球規模の問題です。食品を無駄にする行為が単にもったいないだけではなく、将来的に食糧不足をもたらす懸念や、食品の廃棄に伴い環境を汚染する可能性が指摘されています。
この記事では、食品ロスにおける世界と日本の現状と問題点や、削減に向けた取り組みを紹介していきます。日本だけでなく世界の食品ロス問題についても知りたい方や、食品ロス削減に向けた目標や取り組みを知りたい方は、参考にしてください。
日本と世界の食品ロスの現状と問題点
食品ロスとは、まだ食べられるにも関わらず廃棄されてしまう食品のことです。資源の有効活用や環境負荷の軽減のために、世界各国で解決に向けた取り組みが行われており、日本も例外ではありません。
まずは日本と世界を比較しながら、食品ロスの現状と問題点について把握しておきましょう。
日本の現状と問題点
日本における食品ロスの現状と問題点は、以下のとおりです。
現状
農林水産省と環境省の調査によると、日本で年間に発生する食品ロスは令和2年度の推計値で約522万トンに及んでいます。この数値は前年度より約48万トン減少しており、推計を開始した平成24年度以降で最少量です。
約522万トンという数字だけでは量の多さを実感できないかもしれません。国民一人当たりの食品ロス量に換算すると、1日約113g、つまり毎日お茶碗約1杯分のご飯を捨てているのとほぼ同じことになるのです。
令和2年の食品ロス量は推計開始以来、最小を記録していますが、食品ロスを少しでも減らせるよう継続した取り組みが必要な課題であることに変わりはありません。
問題点
日本の食品ロスは、資源の浪費と多額の税金という2つの問題を抱えています。
農作物や家畜を育てるためには、多くの水や飼料が必要です。さらに食品を加工する工場でも、大量の水やエネルギーが使われています。つまり食品を食べずに廃棄することは、食品を生産する過程で消費した資源を無駄にしてしまうことにつながっているのです。
特に日本は、食料自給率がカロリーベースで38%と低い値を示しているように、食品の多くを輸入に頼っています。輸入された食品の廃棄は、食品が作られた海外の資源を無駄にすることに結びつきます。日本の食品ロスは、国外の資源へも影響を与えている可能性があるといえるでしょう。
また、家庭で廃棄された食品は家庭ごみとして自治体が回収し、処理を行います。ごみ収集や処理にかかる費用の財源は、ほとんどが税金です。
令和元年の環境省の調査によると、食品廃棄物の処理に使われた税金は約7,800億円、そのうち食品ロスの処理には約1,800億円の税金が使われています。
このように、食品ロスの処理には多額の税金が使われているため、食品ロスの削減は税金の節約にもつながるのです。
世界の現状と問題点
ここからは、世界における食品ロスの現状と問題点を解説していきます。
現状
FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界では年間約13億トンもの食品ロスが発生しています。これは、世界で生産されている約40億トンの食料の約3分の1に相当する量です。
一方、世界では飢餓に苦しむ人々が数多く存在しています。世界人口の割合で見ると、約9人に1人は十分な食料を得られず、栄養不足に陥っているのが現状です。
せっかく生産した食品を大量に廃棄している先進国の状況とは反対に、途上国では食糧が足りず、多くの人々が飢餓に苦しんでいます。世界的な食糧の需要と、供給のバランスが崩れているといえるでしょう。
問題点
世界の食品ロスには、地球温暖化と食糧不足という2つの問題があります。
食品の生産や、廃棄された食品の焼却にエネルギーを使うと、二酸化炭素などの温室効果ガスが発生します。温室効果ガスの増加は、海面水位や生態系、農作物への影響が懸念される地球温暖化を助長するものです。つまり食品ロスの増加は、地球温暖化を推し進めてしまっているといえます。
国際連合は、2022年11月に世界の総人口が80億人を突破したことを発表しており、世界の人口は今後も伸びていくと予想され、それに伴い食糧の生産量も拡大が望まれています。
世界人口が増えるにつれて食糧の需要が増加する一方、供給が追いついていないのが現状です。将来的に、食糧が不足する可能性も考えられています。
食品ロスの世界ランキング
国連環境計画(UNEP)は「UNEP Food Waste Index Report 2021」にて、家庭で廃棄される食べ物の量についての世界ランキングを発表しました。
1位中国、2位インド、3位ナイジェリア、4位インドネシアといったように、上位にランク入りしているのは人口が多い国です。そのなかで日本は14位にランクインしており、世界の食品ロスの一端をなしていることがわかります。
ランキングの上位に多く見られるのは、アジアやアフリカの国々です。G7と呼ばれる先進7ヶ国のうちアメリカは5位に入っていますが、そのほかの国は18位ドイツ、20位フランス、23位イギリス、29位イタリア、43位カナダと順位を下げています。
食品ロス削減の目標
地球規模で環境や食糧に対して影響を与える食品ロス。世界的な食品ロス削減への意識の高まりにより、さまざまな目標が掲げられています。
ここからは食品ロスの縮小に向けて、世界と日本がそれぞれ掲げている目標を確認していきましょう。
世界の目標
2015年の国際連合総会にて、150を超える加盟国首脳の参加のもと、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。このアジェンダが、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標、いわゆるSDGsと呼ばれるものです。
SDGsは、17の目標と169のターゲットから構成されています。そのなかの目標12において、「2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」ことが国際的な共通目標として掲げられました。
言い換えると「2030年までに世界全体で食品ロス量を半減させる」ことを意味しており、食品ロス削減は国境を越えて取り組むべき問題であることを明らかにしています。
日本の目標
SDGsを受けて、日本でも食品ロス削減に向けた目標が掲げられました。2019年10月に施行された「食品ロス削減推進法」では、食品ロスの削減に関する自治体の責務や基本方針が定められています。
食品ロスの具体的な削減量については2019年7月に公表された「食品リサイクル法」の基本方針において目標が示され、食品メーカーや小売店から発生する事業系食品ロスを2030年度までに、2000年度の約547万トンから約273万トンに半減させる目標が設定されています。
一般家庭から発生する家庭系食品ロスについては、2018年6月に閣議決定された「第四次循環型社会形成推進基本計画」において、事業系食品ロス同様、2030年度までに半減させる目標が設定されました。
これらの目標達成のためには業種を越えた協力体制や、消費者一人ひとりの意識的な行動など、食品に関わるあらゆる人々の連携が必須といえるでしょう。
食品ロス削減に向けた世界の取り組み
SDGsなどで明示された食品ロス削減に対する目標を達成するために、世界各国で具体的な取り組みが行われています。ここからは、食品ロスの解決に向けて世界の国々で試みている取り組み事例を紹介します。
法律による食品廃棄の禁止
フランスでは事業者によって生み出される食品ロスを削減するため、2016年2月に「食品廃棄禁止法」が制定されました。
これは店舗面積400㎡以上の大型スーパーを対象に、賞味期限が切れた食品の廃棄を原則禁止した法律です。まだ食べられる食品に関しては、契約した慈善団体への寄付や、家畜の飼料・肥料に再利用することが義務付けられています。
ドギーバッグの導入
ドギーバッグの活用も、海外で広まっている食品ロス削減に向けた取り組みの一つです。ドギーバッグとは、飲食店で食べきれなかった食品を持ち帰るための容器や袋のことを指し、グルメバッグと呼ばれることもあります。
ドギーバッグは、料理の提供量が多いアメリカのレストランで歓迎され、アジアでは中国や台湾でも広く受け入れられています。
一方、ドギーバッグに対して強い抵抗が見受けられたのはフランスです。フランスでは、料理の持ち帰りをマナー違反とする意識が根強く、ドギーバッグが普及しませんでした。しかし2016年には、飲食店にドギーバッグを常備することを義務化する法律が制定されました。
ドギーバッグを利用する国民はまだ少なく、政府は食品ロス削減を推し進めるため、ドギーバッグの利用を義務化する法案の採択を目指しています。
無料スーパー
オーストラリアには、経済的困窮者に向けて食品などを提供する無料スーパーが存在します。2017年にシドニーで開店したところ世界的に話題となり、翌年にはメルボルンにも店舗を構えました。
本来の無料スーパーの目的は、野菜不足に陥りがちな生活困窮者のために、野菜を提供することでした。しかし近年は、野菜以外の食品の取り扱いも増えています。
現在無料スーパーで提供されているのは、ホテルやレストラン、カフェ、食品メーカーなどから無償で引き取った、賞味期限が近付いたり売れ残ったりした食品です。
生活に困窮した人々の食を支えるだけでなく廃棄予定の食品を救っているため、食品ロス削減に寄与しつつある取り組みといえるでしょう。
連帯冷蔵庫
スペインのバスク州には2015年、連帯冷蔵庫と呼ばれる公共の冷蔵庫が設置されました。連帯冷蔵庫の目的は、貧困者への食料援助と食品ロス削減です。
冷蔵庫は屋外に設置されており、家庭や飲食店などで余った食品を冷蔵庫に入れておくと、ほしい方が自由に持っていける仕組みです。
この取り組みは食品ロスを減らすと同時に、必要とする方に食品を届けられるとして注目されました。物を個人間で共有する「シェアリングエコノミー」に近い取り組みとも考えられています。
食品ロス削減のために世界の取り組みを知ろう
食品ロスは、地球規模の環境・食糧問題に発展しており、SDGsにおいてターゲットの一つに掲げられたことを皮切りに、日本を含めた世界の国々で食品ロスの解決に向けた活動が行われています。
食品ロスの削減には、私たち一人ひとりの意識と行動が欠かせません。賞味期限が近い食品や規格外の食品などを率先して購入することも、食品ロス削減へのアクションの一つです。
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