食品ロスの発生量とは?現状や目標からわかる削減に必要な取り組み

食品ロスの発生量とは?現状や目標からわかる削減に必要な取り組み

使いきれなかった食材や食べ残しなどの理由により捨てられてしまうことを「食品ロス」といいます。日本はもちろん、世界中で解決しなければならない課題となっていますが、身に迫って問題だと感じている方はまだまだ少ないのが現状です。

インターネットやテレビのニュースで食品ロスについて報じられた際に「なにかできることはないか」と考えても、食品ロスの現状や情報に触れる機会が少ないことが1人ひとりの取り組みにつながりにくくしているかもしれません。

そこで本記事では、食品ロスの原因から実際に無駄になっている食品の量、そして食品ロス改善のために講じられている世界の対策などをご紹介します。

食品ロスが起こる原因

ディスカッション

世界中で深刻な問題になっている食品ロスですが、そもそもなぜ食品ロスは起こってしまうのでしょうか。主な原因といわれているのが、食材の食べ残し使いきれなかった食材の廃棄です。

特に先進国での原因には、賞味期限への過剰な反応が大きいと考えられています。まだ使える食品であっても賞味期限を1日過ぎただけで廃棄されてしまうなど、賞味期限切れによる食品ロスの発生が特に多い傾向にあります。

また膨大な種類の食品があることで、自宅に食品がたくさんある状態でも新しく購入してしまうケースもあるでしょう。そのほか、野菜類の皮の剥きすぎやヘタ部分の廃棄も原因の一つです。

味や食感の好み、調理技術の不足から過剰除去が発生してしまうことは仕方ないことでもありますが、工夫次第で対策ができることも食品ロス削減に向けて考えていく必要があるでしょう。

食品ロス削減の目標

多くの食品を無駄にしている現状を変えるには、やはり一定の目標を掲げることが有効です。世界でも多くの国が食品ロス削減のための目標を設定しています。

世界食糧サミットにおいて宣言された目標は、2030年までに食品ロス・廃棄物を半減させることです。「小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」ことを明示しました。

将来の食糧難や生態系の保護、温室効果ガス削減にも食品ロスの削減は関係するとして、世界規模での取り組みを呼びかけています。

日本の目標も、2030年までに2000年度比で数値の半分まで食品ロスを削減することです。事業系食品ロスだけではなく、家庭系食品ロスも半減を目標としています。まだまだ改善途中であり、現状の達成率では2030年の半減は難しいのではとの意見も出ているのが現状です。

目標を達成するには業種を問わず協力した取り組みを行うことや、消費者も他人事だと考えるのではなく、個人個人が意識を持って食品ロスに対峙する必要があるでしょう。

食品ロスの発生量

測り

実際に食品ロスはどの程度発生しているのでしょうか。ここからは、食品ロスの問題を身近なものとしてとらえるために、具体的な数値を紹介します。

普段何気なく残している食品が、実は大量の廃棄のうちの一つだと気づくきっかけになるかもしれません。また日本特有の食品ロスの原因を事業系、家庭系に分けて解説します。

世界

世界の食品ロスの発生量は13億トンにも上るといわれています。年間で生産される食品量が40億トンといわれているので、3分の1以上もの食品が廃棄されているのです。また1人当たりの廃棄量は年間約83kg(推計値の中間)とされています。

上の数値を見ると食品ロスの削減が必要だといわれるのも当たり前だと思えるほど、まだ食べられる食品が毎日のように廃棄されていることがわかるのではないでしょうか。食品ロスの量が多い国としては、人口の多い中国やインド、アメリカに続いて日本は4位です。

日本

日本の食品ロスの発生量は、令和2年度推計で事業系・家庭系を合わせて522万トンとされています。国民1人当たりに換算すると、毎日お茶碗1杯分の食べ物が廃棄されていることと同じです。また、世界中の飢餓に苦しむ人々へ向けた世界が援助している食品量のおよそ1.2倍に相当します。

日本は資源のほかに、食料品も多くの国から輸入している輸入大国です。大量に輸入しながら、その多くが廃棄されていると考えると非常に不合理な状況だといえるでしょう。世界で支持される「もったいない」の精神が今こそ必要といえます。

事業系

日本の食品ロスの発生量522万トンのうち、275万トンは事業系によって発生している食品ロスです。日本の食品ロスの原因の一つには、世界的に見ても厳しい賞味期限への考え方があります。

なかでも事業活動を伴って発生する「事業系食品ロス」では、日本特有の慣習である「3分の1ルール」が大きな原因の一つです。

「3分の1ルール」とは、製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつ均等に分け、最初の3分の1の期間に納品しなければいけないという商慣習で、食品メーカー・卸業者・小売業者の間の流通過程でルールが設けられています。

3分の1の期限を過ぎてしまうと、賞味期限までまだ日数があったとしても、メーカーへ返品または破棄されてしまいます。

食品ロス削減のためはもちろん、昨今は食品・資材の無駄になるとして見直す動きが始まっています。

家庭系

家庭系食品ロスとは名前の通り家庭から発生する食品ロスのことをいい、日本の食品ロスの発生量のうち、247万トンが家庭系食品ロスの量です。多くは食べ残しや使いきれなかった食材の廃棄、または厚く剥きすぎた野菜類の皮などの除去が該当します。

もともと日本人は食への探求心や品質への関心が高い傾向にあります。生食を好むなど衛生面について厳しくならざるを得なかった面もあるでしょう。しかし食品ロスの削減を実現するためには、食品の保存・保管方法の工夫や、食品の選び方・見方を変えていかなければなりません。

最新の食品ロス量

世界中で課題となっている食品ロスの削減を実現するためには、最新の情報を把握しておく必要もあります。世界の食品ロスの発生量、先進国と開発途上国の差なども解説します。

上記でも触れましたが、世界の食品ロスの発生量は13億トンです。世界全体で人が消費するために生産された食品の約3分の1に相当し、食料が生産されたときに発生した温室効果ガスなども無駄に発生させたことになります。

食品ロスの問題だけではなく、環境面から見ても現在の状況は決して楽観視できるとはいえないでしょう。

また先進国と途上国における食品ロスには、それぞれで特徴があります。先進国での食品ロスは、基本的に食べ残しや食材の過剰除去など、消費の段階で発生します。しかし途上国の場合は、消費の段階でのロスではなく、提供前の段階で失われるケースが多いとされています。

原因としては、技術的・気候やインフラなど、環境的な問題から食品の貯蔵が難しいのではと見られています。

世界の食品ロス比較表

  中国 アメリカ 日本 ドイツ フランス イギリス
総人口 13億8,392万人 3億2,174万人 1億2,657万人 8,272万人 6,439万人 6,313万人
食品廃棄量(総量) 1億300万t 5,640万t 1,700万t 1,092万t 999万t - 1,327万t 1,200万t
食品廃棄量(可食部) - - 640万t - 469万t - 602万t 900万t
1人当たりの食品廃棄量 75.74kg 177.5kg 133.6kg 136kg 148.7kg - 200.5kg 187kg
食糧自給率 - 130% 38% 95% 127% 63%
農産物輸入額 $1,013億 $1,236億 $517億 $848億 $511億 $534億

中国の総廃棄量の多さが目立ちますが、1人あたりの食品廃棄量を見ると、反対に中国は表の中で一番少ない廃棄量です。大きな数字に惑わされることなく、自国の食品廃棄量や食品ロスの発生量を把握して、できることから改善していく必要があるといえるでしょう。

食品ロス削減に向けての取り組み

 

food loss and waste

世界規模で食品ロスが問題になっている理由や具体的な数値はわかりましたが、問題を実感しただけでは食品ロス削減を実現できるわけではありません。

そこで以下からは、食品ロス削減に向けてどのような取り組みが行われているかについて解説します。日常からできる食品ロス削減の方法もあるので、ぜひできることから実践してみてください。

世界での取り組み

国家規模として取り組んでいる事例としては、フランスの法整備が挙げられます。まだ消費できる食品の廃棄の禁止、一定規模の大型スーパーを対象とした慈善団体等への食品の寄付を義務付けるなど、法律を新たに整備しました。

またオーストラリアでは、食糧問題の解決に取り組む慈善事業団体が新しい形のスーパーを立ち上げています。消費期限が近い食材を扱い、消費者が商品の値段を決められるシステムです。強要されることなく、自身で納得できる買い物をしながら食品ロス削減を叶えられるでしょう。

イギリスでは、余った食材を希望者で分け合えるアプリの開発もされています。食料を必要とする方が手にすることができるうえに、廃棄するしかなかった食材の活用ができることから、地域コミュニティの活発化まで望める取り組みです。

日本での取り組み

国を挙げての取り組みから慈善団体、地域、個人への呼びかけなど、世界ではさまざまな食品ロス削減への取り組みが行われています。

一方、日本ではどのような取り組みが行われているのかを見ていきましょう。また日常生活で食品ロス削減を叶える方法にも触れるので、ぜひ参考にしてください。

地方公共団体

地方公共団体では、まず食品ロスに関する知識を広めるための取り組みが行われています。養成講座の開催やパンフレットの配布、動画による啓発などが基本活動だといえるでしょう。

また災害用に備蓄されていた食品を、市内の法人や団体に寄付するなど実際の食品を無駄にしないための動きもあります。フードバンクとの連携による、食品を製造する際に出る端材や型崩れ品を提供するバザーなどは、地域住民にも喜ばれている取り組みです。

ほかにも飲食店への啓発など、食品ロス削減のために必要な基本知識を広める活動が主だといえるでしょう。

民間等

民間ではメーカーによる商品の保存期間を延長させる取り組みなど、賞味期限、鮮度保持期間の延長に対するアプローチも始められています。そもそもの賞味期限を長くすることで、消費者が使いきれないという問題の解決に取り組んでいます。

また魚や果物など、以前は流通に乗せられなかった規格外の商品へのアプローチも盛んです。そのまま価格を抑えて販売する、福袋形式での販売、または別の食品へ加工するなど、メーカー独自の方法を模索しています。

生徒・学生

生徒や学生も学校からの提案や、自発的な働きによってさまざまな取り組みが行われています。代表的なものは、食品ロスの周知・理解を深める手作り新聞の作成による啓発や、コロナ禍の影響により行き場を失った食品を学校で配布するなどです。

また飲食店での食べ残し問題にアプローチする、ドギーバッグ普及委員会の立ち上げ・活動は地域を巻き込んで展開しています。SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」に主眼を置き、食べきれなかった食品の積極的な持ち帰りを提唱中です。

日常生活

各自治体や民間、学生たちの積極的な取り組みだけでなく、家庭系食品ロスの削減のためには日常生活でできる取り組みが重要です。

以下のようなちょっとした配慮が日常生活でできる取り組みとして挙げられます。

  • 買い物に行く前に冷蔵庫の中身をチェックする
  • 調理は残っている食材から使い、食べきれる分だけにする
  • 半端な食材の保存方法を工夫する
  • 外食時は食品ロス削減に協力的な店舗を選ぶ
  • 余らせがちな場合はフードバンクへの寄付を検討する

自身の出来る範囲で、無理のない方法から試してみてはいかがでしょうか。

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世界規模で食品ロスを削減・改善することは、子どもたちの将来を幸せなものにするためにも必要な課題です。食品ロスの原因は日常生活の中にも潜んでいるので、国や自治体に任せておけば良いというものではありません。

身近な部分に原因があるということは、普段の生活を少し変えるだけでも改善のお手伝いができます。まずは小さなことから挑戦してみてはいかがでしょうか。Kuradashiで毎日のお買い物を便利に、そして自然に食品ロス削減のお手伝いをしてみましょう。

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くらだしマガジン編集部

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