まだ食べられる食料が廃棄されてしまう食品ロス。世界では貧困にあえぐ人がいる一方で、先進国を中心に毎日大量の食料が廃棄されています。
食品ロスは”もったいない”というだけでなく、廃棄にかかるコストが増えるなどの経済的な問題や、二酸化炭素の排出など環境への悪影響が懸念されています。食品ロスを削減するためには、家庭での対策とともに企業でも廃棄しない取り組みが必要です。
そこで本記事では、食品ロスの問題についてと企業ではどのように食品ロス削減に取り組んでいるのかを紹介します。
食品ロスとは
食品ロスは、品質に問題がないにもかかわらず、規格外や賞味期限切れなどの理由で捨てられてしまう食品のことを指します。
まずは、世界で社会問題として取り上げられている食品ロスの日本の実情、そして食品ロスが問題視されている理由を見ていきましょう。
日本における食品ロスの実情
日本では、近年「食品リサイクル法」や「食品ロス削減推進法」が施行され、生産者だけでなく国や自治体でも食品ロス削減にむけて取り組んでいます。では、現在日本ではどれくらいの食品ロスがあるのでしょうか。
2020年度の農林水産省の計測によると、日本の食品ロス量は年間522万トン。これは、国民全員が毎日お茶碗1杯分の食料を捨てた場合の量に相当します。
日本の食料自給率はカロリーベースで38%と多くの食料を輸入に頼っているにもかかわらず、まだ食べられる食品を大量に廃棄しているのが現状です。
一方で世界には貧困に悩む人が多く、国連WFPは毎年約420万トンの食糧を支援しています。日本だけでもこの1.2倍もの食べられる食品が捨てられているのです。
食品ロスが問題になるわけ
食品ロスが増加すると食品が無駄になりもったいないのはもちろんですが、ほかにも以下のような問題が加速します。
- 廃棄コストの増加
- 環境への負担
- 食の不均衡
企業から排出される廃棄物を処理する場合、企業が費用の一部を負担しています。けれども、廃棄費用の多くには税金が使われているのです。
食品ロスを含むゴミを処理するために、日本では年間に約2兆885億円もの費用がかかっています。この金額を日本人1人あたりに換算すると、国民全員が一年で16,500円ずつ負担していることになるのです。
また、ゴミを燃やしたり埋め立てたりする過程では、二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスが発生します。現在世界全体では、食品ロスにより約4.4ギガトンもの温室効果ガスを排出していると言われており、これは総排出量の約8〜10%を占めます。
昨今、地球温暖化防止に向け世界中で二酸化炭素の削減が求められていますが、そのためには食品ロスも削減する必要があるのです。
食品ロスはなぜ生まれる?
まだ食べられるのに廃棄される食品と聞くと、家庭での食事の食べ残しや冷蔵庫の奥にしまって使い忘れてしまった食品などが思い浮かぶのではないでしょうか。
食品ロスにはこのような家庭系ロスのほかに、企業で生産過程に発生する食品の切れ端や賞味期限が迫り店頭で売れなくなったなどの理由で破棄される、事業系のロスもあります。
2020年の段階で日本の食品ロス522万トンのうち事業系ロスは275万トン、家庭系ロスは247万トンに及び、食品ロスを削減するには家庭だけではなく企業側の対策も求められているのです。
食品ロス削減のメリット
企業が食品ロス削減に取り組むと、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。
まず挙げられるのは、無駄を削減できるということ。まだ食べられるけれども廃棄となる食品を、価格を下げたりほかの商品に形を変えたりして販売できれば、食材を無駄にすることなく有効活用できます。
価格を下げて販売することで消費者は食べられる食品をお得に購入でき、集客アップも期待できます。
さらに、廃棄が減れば処分する際にかかっていた費用を削減できるため、企業のコスト削減にも繋がるでしょう。食品ロスの量が減れば廃棄の過程で生まれる二酸化炭素も減少し、地球温暖化の抑制にも貢献できます。
企業ができる食品ロス対策
企業が食品ロスを削減するためには、売れ残らない仕組みや食品を長く持たせる工夫が必要です。そこで次は、食品ロスを削減するために企業ができる対策について紹介します。
賞味期限の延長
賞味期限はおいしく味わえる期限を示したもの。期限を過ぎてもすぐ食べられなくなるわけではありませんが、やはり販売や消費する上では廃棄の基準となりますよね。
賞味期限を延長できれば、より長く販売できるようになり、売れ残り商品や使い切れず捨ててしまう食品の数を減らすことができます。
では実際に企業が賞味期限を延長するためできる工夫を見ていきましょう。
容器包装を工夫して食品を長持ちさせる
容器への工夫は内容物によって異なりますが、食品に酸素が触れることを避ける素材を使用することで、中身の鮮度を保ち食品を長持ちさせることができます。
個包装で未使用の食品の酸化を防ぐ
世帯の人数が少ない場合など一度に食品を食べきれない場合も多いでしょう。お菓子やヨーグルトなど開封すると湿気や酸化が進みやすい食品は、個包装や少数パックにすることで未使用部分を長く保存できます。
賞味期限の記載方法を工夫する
政府からは、賞味期限が長い商品は年月日表示から年月表示に切り替えて、賞味期限を長くすることが推奨されています。これにより、期限切れでの廃棄が少なくなり、店頭での商品整理の負担も軽減することができます。
訳あり食品販売で売れ残り対策
訳あり食品販売とは、美味しく食べられるものの、何かしらの理由で正規の値段では売れない商品を価格を下げて販売する方法です。
訳あり食品販売専門の通販サイトもあり、国産和牛や海鮮物などの高級食品もお得に手に入ります。
訳ありになる理由は賞味期限が迫ったり、生産や運搬の過程でパッケージが潰れてしまったり、新商品発売による旧商品の値下げすることになったりなどさまざまです。
本来廃棄される可能性のあった食品を購入することで、家計が助かるだけでなく食品ロスの削減にも貢献できる魅力的なシステムとなっています。
フードバンクへの寄付
フードバンクとは、企業や農家で販売や使用されなかった食品を寄付してもらい、食品を必要としている人に届けるボランティア活動のことです。
食品が届けられる場所は、子ども食堂や福祉施設、貧困家庭などが多く、食糧問題を解消するための取り組みとして注目が集まっています。
企業の食品ロス対策具体例
実際に食品メーカーやコンビニチェーンなどではさまざまな食品ロス対策が行われています。どのようなことに取り組んでいるのか具体例を見ていきましょう。
山崎製パン
山崎製パンでは、製造で発生するパンの耳などはほかの製品の材料に使ったり、容器で使用した紙やプラスチックなどは肥料や燃料などに再利用したりと、食品や材料などの再資源化に努めています。
この取り組みの結果、2021年度は生産過程で発生した廃棄物の再資源化率99.5%(2021年度)を達成しました。
このほかにも、容器包装の変更や消費期限設定の見直し、店舗や家庭で期限切れによる廃棄量を減らす取り組みも行っています。
江崎グリコ
江崎グリコでは、家庭での賞味期限切れの対策として「賞味期限お知らせシステム」を導入しています。
賞味期限お知らせシステムとは、カレーや菓子など長期保存用の商品を対象に、購入商品を登録しておくと期限切れ前にメールでお知らせが届く仕組みです。
災害用にストックした商品は期限やストック量を忘れがちですが、システムに登録した商品はいつでもマイページから確認可能です。
クラダシ
クラダシは、賞味期限切れや印字ミスなど様々な理由で、通常の販路で販売できない食品や日用品をお得な価格で購入できる通販サイト「Kuradashi」を運営しています。
商品がフードロスになってしまう理由を表示して販売することで、消費者が納得して購入できるようになっています。
また、購入金額の一部は社会貢献活動団体に寄付されるため食品ロス削減以外にも社会貢献が可能です。購入者は自分がどれだけ社会に貢献したかをマイページから簡単に確認でき、社会貢献度を実感できるのも特徴です。
コンビニチェーン
弁当やスイーツなど消費期限の短い商品を扱うコンビニチェーンでも、食品ロスをめざしてさまざまな取り組みがされています。
2021年には、農林水産省を始めとした省庁と連携し4社のコンビニチェーンが「てまえどり」で食品ロス削減を呼びかけるキャンペーンを行いました。
それでは、コンビニチェーンで行われている食品ロスへの取り組みの例を見ていきましょう。
セブンイレブン
セブンイレブンでは、企業での食品ロスの原因の1つとなっている商慣例の「3分の1ルール」を見直しました。製造日から賞味期限までの「3分の1」の期間内に納品できなかった商品は廃棄される可能性が高かったため、期限を「2分の1」に延長し、廃棄量の削減につとめています。
また、店舗では販売期限が近いおにぎりや弁当を電子マネー「nanaco」で購入するとボーナスポイントがもらえる「エシカルプロジェクト」で商品の廃棄を防ぐ取り組みをしています。
出典:セブン&アイ・ホールディングス|食品ロス・食品リサイクル対策
ファミリーマート
ファミリーマートは、2019年にコンビニ業界で初めてクリスマスケーキを完全予約制としました。恵方巻などの季節商品も予約をメインにして店頭分を減らす努力を続けています。
また、揚げ物商品で使った油はインクや石けんなどに100%リサイクルしています。そのほか、製造過程の廃棄物や店舗で発生した食品ロスは飼料・肥料に再資源化し、再生した飼料で育てた豚を弁当や総菜パンの具材として使用するなど、循環型リサイクルに努めています。
ローソン
ローソンでは毎年2%以上改善することを目標に食品リサイクルに取り組んでいます。
店舗で揚げ物に使用した廃油を石けんなどにリサイクルし、廃棄された食品は飼料や肥料に再資源化しています。その結果、2007年に22.5%だったリサイクル実施率は2021年には65.5%まで向上しました。
また、ローソンでは創業当時から値引き販売を行って食品ロス削減につとめています。2022年にはデザートなどの販売期限切れで賞味期限内の商品を大幅に値引きする実証実験を行うなど、新たな取り組みにも挑戦中です。
ミニストップ
ミニストップでは食品リサイクル法施行の前から、販売期限が過ぎた食品の堆肥化に向けて実験や検証を繰り返してきました。
現在では販売期限切れで廃棄になった弁当などを飼料・肥料・バイオガスに変えて再資源化しています。
また持続可能な食品リサイクルを続けるためには、肥料など再資源の質の向上したり、安定した供給をしたりすることが重要とし、課題解決に向けて取り組みを続けています。
出典:資源循環と廃棄物の削減 | 環境活動 | ミニストップ
食品ロス削減は企業・個人の努力が必須
食品ロスを削減できれば、廃棄にかかるコストが削減できたり、地球温暖化を防止したり、食糧問題や経済格差の加速を防いだりといったことにも繋がります。
そして食減ロスを削減するには、食品ロス削減のためには企業の努力だけでなく家庭でも期限切れ間近の商品を積極的に取り入れるなどの努力が必要です。
Kuradashiでは、賞味期限が迫った食品やパッケージに印字ミス・傷がある商品などを、お得な価格で販売しています。おいしい食事を楽しみながら、食品ロス削減に貢献できるのも魅力。これを機にフードロスの可能性がある食品を試してみてはいかがでしょうか。