「フードロス」とは、本来消費されるはずの食品が捨てられてしまうことです。私たちの身近にあるコンビニでは、販売期限切れになった商品が毎日大量に可燃ごみとして廃棄されています。いま、国は2000年と比較した事業系フードロスの発生量を2030年までに273万トンまで半減させることを目標に掲げています。今回は、フードロス削減に向けてコンビニ各社が取り組んでいること、私たち消費者にできることをご紹介します。
なぜコンビニでフードロスが発生するのか
コンビニでのフードロスの発生には、いくつかの原因があります。
- 陳列棚の奥の商品から買われていく
- 多くの商品を購入して陳列しておく必要がある
- 無添加食品の需要増加
奥の商品から買われていく
コンビニやスーパーなどの小売店で取り入れられている、陳列棚の「先入れ先出し」という方法。消費期限や賞味期限の近い商品を手前に配置して、期限の遅い商品は奥に配置することを指します。小売店としては、期限の近い商品を先に購入してほしいという意図があります。
しかし、「奥の商品の方が日持ちするし鮮度も良い」と考える消費者が一定数いるため、実際には陳列棚の奥の商品=期限の遅い商品が先に買われてしまいます。実態としては、先入れ先出しが本来の狙い通りに機能していないのです。
多くの商品を陳列しておく必要がある
コンビニの店舗には、毎日2~3回ほど商品が納品されます。店頭にたくさんの商品が並んでいる方が見栄えが良く、購買意欲をそそられるために品数を絶やすわけにはいかないという事情があります。
需要よりも多い商品が並べば、その分だけ売れ残りが発生します。この売れ残りが、フードロスに繋がっているのです。
無添加食品の需要増加
コンビニのおにぎりやお弁当には、食材が傷まないように食品添加物が加えられますが、最近では健康意識の高まりから、無添加食品が増えています。無添加ですから、当然消費期限は短くなってしまいます。
身体に優しく健康に良い食品を求めつつも、多くの消費者が「少しでも長く日持ちするもの」を選んでしまう矛盾が、フードロスを発生させています。
小売店で発生するフードロスは1年間で約64万トン
では、コンビニを含む日本国内の小売店は、年間でどれほどのフードロスが発生しているのでしょうか。
2019年度の調査によれば、家庭で発生する「家庭系食品ロス」が261万トン、事業活動で発生する「事業系食品ロス」が309万トンです。そして、「事業系食品ロス」のうち、スーパーやコンビニのような食品小売業で発生するものが64万トン、これは「事業系食品ロス」の約20%を占めています。
国や自治体がフードロスの削減を呼びかけていることもあり、発生量は減少傾向にありますが、関連企業はフードロス削減に向けて日々取り組みを強化しています。
*出典:農林水産省
フードロス削減へ向けた大手コンビニ各社の取り組み
大手コンビニ各社は、フードロス削減に向けてどのような取り組みをしているのでしょうか。
セブン-イレブン
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長鮮度商品の開発
素材、製造工程、温度管理の方法を改善することで、美味しさと品質を落とさずに消費期限の長期化を可能にしました。消費期限の長期化のポイントは、食材の調達から配送に至るまでに「いかに菌の増殖を防ぐか」。セブン-イレブンでは盛り付け場の室温を10℃以下に設定したり、調理後はすぐに冷却し、食材に合わせて独自の食品保存用のガスを入れる工夫をしています。
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長期保存可能かつ食べきりサイズの惣菜の販売
セブン-イレブンには、少量サイズの「パウチ惣菜」が多く陳列されています。これらは食べ残しが発生しないように考えられた商品です。少量サイズの冷凍カット野菜は、栄養が偏りがちなインスタントラーメンなどに使うのにもちょうど良い量です。
*参考:セブン-イレブン
ローソン
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セミオート発注システムの導入
各店舗の客層や天気の情報を分析して、商品ごとの発注数を自動で提案するシステムです。発注者は、自治体・地域の開催行事を考慮した発注量の調整によって、無駄な廃棄の削減と売上への貢献が期待できます。他にも、店内で調理をする「まちかど厨房」では、客の動向に合わせて調理する商品を調整したり、売れ残り商品を値引き販売する取り組みを行っています。
*参考:ローソン
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フードバンクへの寄贈
ローソンは、2019年8月より店舗への納品期限が切れてしまった商品を一般社団法人全国フードバンク推進協議会へ寄贈しています。フードロスを削減するだけでなく、食品を本当に必要としている家庭や施設に贈り届ける取り組みです。
*参考:ローソン
ファミリーマート
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おでんの販売方法を変更
以前は専用の鍋をレジ横に置いて、保温しながらおでんを販売していました。ところが、仕込みをして数時間後に、売れ残った具材を廃棄しなければならないことが課題でした。そこで、2020年1月からおでんをパックに詰めた状態で販売し、購入した消費者がレンジで温めて食べる方法へ切り替えを行いました。
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冷凍食品の販売数増加
常温保存の期限切れしやすい食品は、店舗の売れ残りや家庭の食べきれない場合は廃棄されます。その点、冷凍食品は賞味期限が長く、家庭でも冷凍庫で長期保存できるため、フードロスの削減に繋がります。そこでファミリーマートでは、プライベートブランド「ファミマル」の冷凍食品のラインナップを増やしています。
*参考:ファミリーマート
私たちにもできるフードロス削減
ここまでご紹介してきたように、コンビニ各社がフードロス削減に取り組んでいます。しかし、フードロス削減のためには私たち消費者のアクションも欠かせません。そこで、コンビニなどで気軽に実践できるフードロス削減の方法をご紹介します。
- 「てまえどり」をする
- エシカルシールの貼られた商品を購入する
- フードロス通販サイトを利用する
「てまえどり」をする
農林水産省は、2021年6月より「てまえどり」運動を食品関連事業者へ呼びかけています。商品棚の手前に置かれているものを積極的に手に取ってもらい、消費期限や賞味期限の近い商品の廃棄を防ぐことが狙いです。
エシカルシールの貼られた商品を購入する
セブン-イレブンは、2020年5月より「エシカルプロジェクト」をスタートしています。その一環として、消費期限の近い商品を購入するとポイントが還元されるシステムを取り入れました。
具体的には、「エシカルシール」が貼られた商品を購入することで、nanacoポイントが5%付与されます。フードロス削減に貢献しながら、ポイントを効率よく貯めて使う「ポイ活」におすすめです。
*参考:セブン-イレブン
フードロス通販サイトを利用する
フードロス通販サイトを通して、フードロスの削減に貢献することもできます。KURADASHIでは、廃棄される商品を「美味しくお得」に最大97%オフで購入できます。さらに、売上金の一部は国連WFP(World Food Programme)などの社会貢献活動団体へと寄付されます。自分のための買い物が誰かのためになり、そしてフードロス削減にもつながる。そんな体験ができる通販サイトです。
持続的な社会活動につなげるためのフードロス削減
SDGs(持続的な開発目標)では、持続可能な消費と生産のパターンを確保する「つくる責任、つかう責任」が掲げられています。
2030年までのフードロス削減目標に向けて、コンビニ・スーパーなどの食品関連企業は、様々な取り組みを実施しています。今後は、食品業界のサプライチェーン・バリューチェーンを巻き込んだフードロス削減の取り組みが加速するでしょう。
食品は消費しないかぎり、ほとんどが廃棄され、可燃ごみとなりCO2を排出します。一部の廃棄される食品や家庭から出る生ごみはバイオマス資源として活用されていますが、その対策も十分とはいえません。
私たち消費者にできることとして、今回ご紹介したような取り組みに参加し、フードロス削減に貢献してはいかがでしょうか。