【参加者レポート】漁業の未来を守れ!和歌山県すさみ町で実際に船に乗り考えた1週間の記録

【参加者レポート】漁業の未来を守れ!和歌山県すさみ町で実際に船に乗り考えた1週間の記録

2022年9月12日(月)~18日(日)(台風の影響で1日短縮)にかけて、和歌山県すさみ町にて社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」(以下「クラチャレ」)を実施し、同年10月5日(水)にはクラダシのオフィスにて事後報告会を実施しました。(※1)
このマガジンでは、参加した学生たちに体験した内容をレポートしてもらいます。

【クラチャレについて詳しくはこちら

■レポートを書いた人(クラチャレ参加者)

・四元貴也
・植草七海
・梶本彩葉
・渡邊稜太
・川原紀春

■和歌山県すさみ町ってこんなところ!

和歌山県すさみ町は海と山に囲まれた自然豊かな町です。「ケンケン鰹」で有名なカツオ漁や猪豚が有名で、また日本におけるレタス栽培発祥の地でもあります。
そんなすさみ町の1番の魅力は、なんといってもすさみ町の皆さんの温かさ!行く先々でとにかく私たちを歓迎してくださり、心が温かくなる1週間でした。

■活動内容・スケジュール

【1日目】町長面談&交流会

東京から飛行機で約1時間、南紀白浜空港から車で30分ほどですさみ町に到着!数年前にできた道路のおかげで、関東からもすさみ町に行きやすくなったそうです。
到着して早速すさみ町役場にて、町長をはじめとした役場職員さんといろんなお話しをさせていただきました。特に印象的だったのは、「人口が減ることよりも人材が減ることが課題。目標は、すさみ町住民一人一人がジグゾーパズルのワンピースとして輝くこと」という町長のお言葉です。外の人間は、データを見るとどうしても人口が減っていることに目をむけてしまいがちです。しかし、町長は今あるものに価値を持たせるべきだと考えておられ、人口減少以外の課題に関しても、地域の文化を支えながら解決すべきという考えをお持ちでした。町長をはじめとしたすさみ町の皆さんの温かい人柄に触れ、緊張が少しほぐれたと同時に、現地の課題に関して生の声を聞き、クラチャレに対してのやる気も増すことができました。

すさみ交流会

岩田町長、積水ハウス岡本さん、クラダシ代表関藤さんと一緒に夜は交流会を開いていただき、すさみ町の皆さんとBBQを通して交流しました。すさみ町は山も海も近いため、すさみ町の名産物である猪豚や新鮮な海鮮を食べながら、いろんなお話をしました。

 すさみバーベキュー

多くの方に交流会に参加していただき、とても楽しい時間を過ごしました!

【2日目】漁1日目&武蔵野美術大学生とのワークショップ

朝3時半に起きて、まだ外も暗い中眠たい目をこすりながら、漁師さんの船に乗せていただき、漁に出ました。空の色の変化を楽しんでいると、魚がかかり、まずは漁師さんのお手本を見ました。素早く釣り糸を引っ張り魚を引き揚げ、魚がストレスを感じる前に心臓を止めて、氷水に入れました。数秒前まで海の中で泳いでいた魚を目の前で殺す様子を目の当たりにして、強い衝撃を感じ、言葉が出ませんでした。しかもその魚は市場価値の低い「オキザワラ」という魚で、売買されることなく捨てられてしまうこともある魚でした。この一連の流れを実際に体験し、オキザワラのようないわゆる「未利用魚」の市場価値を高めることが漁師さんにとっても、また魚にとっても必要なことであると感じました。

すさみ作業

すさみ漁

午後からは、授業の一環としてすさみ町に滞在していた武蔵野美術大学の学生とワークショップを行いました。私たちは漁業の観点から、武蔵美の学生たちはすさみ町全体の地方創生の観点から意見を出し合い、最終的に「すさみ町の魅力を発信する新たな商品の開発」を考えました。さすが武蔵美生というようなユニークな視点やアイデアを聞き、とても刺激となるワークショップとなりました。駅弁ならぬ船弁、船上寿司屋などの他、漁師アイドルや刺身図鑑、漁師ファッションショーなど面白いアイデアがたくさん出ました!

すさみ意見交換会

すさみ意見交換会メモ

【3日目】漁2日目

漁2日目はスルメイカ漁に同行しました。船についているレーダーを使い、イカの群れを探し、そこに擬似エサのついた紐を垂らしてあげるという釣り方でした。体感的には、一回に平均3匹ほどが獲れるため、地道な作業だと感じました。獲れたイカは船の上で開き、船上干しスルメとして船の上で干しました。

 すさみ イカ

【4日目】未利用魚試食会・中間報告会

午前中は、2日後に魚の販売を行う、道の駅すさみに現地調査に行きました。担当者の方にお話を伺うことができ、道の駅の客層や客単価、どういうものが売れやすいのかなどを聞かせていただきました。
お昼は、関東に数店舗ある「100本のスプーン」のシェフに来ていただき、未利用魚である「オキザワラ」と「シイラ」を使った料理を振る舞っていただきました。未利用魚と聞くと、なんとなく美味しくないんじゃないかというイメージを持たれる方もいると思います。しかし、実際に食べてみると驚くほど美味しくて、未利用魚のさらなる可能性を感じたと同時に、未利用魚をもっと世間に広めるべきだと思いました。

すさみ 料理

午後は、この3日間の振り返りと明後日の道の駅での販売に向けて販売方法などの案を発表する中間報告を行いました。たくさんの方に来ていただき、的確なフィードバックをいただきました。

【5日目】道の駅での販売準備

5日目は翌日の道の駅での販売に向けた準備をメインで行いました。また、黒龍丸の今村さんという漁師さんの家にお話を聞きに伺いました。早くからメインを遊漁船に切り替え、今では常に予約がいっぱいだという今村さんの話はとても興味深いものでした。例えば農業でいうJAのような、漁協と呼ばれる組合を他の漁師さんを巻き込みながら今後どう活性化していくかお話ししていただき、様々な立場から考える必要がある難しい課題を広い視野と長期的な目線で考えられていることが印象的でした。

【6日目】道の駅での販売

ついに道の駅での販売の日!ちょうど台風が接近しており、風が強い中での販売となりました。販売した魚は、スルメの冷凍・船上干し・一夜干しとメイチダイです。船上干しはイカ焼きとして販売しました。

結果的にイカ焼きは完売することができました!他の商品も最初は苦戦しましたが、1つ500円で販売していた冷凍イカを、販売価格を変更して3つで1,200円にしてみたり、商品をお店の外に並べたり。他にもメイチダイはお造りにしたり、お客さんへの商品の説明時に「私たちが釣った」ことを強調するなどの試行錯誤の結果、想像以上に売ることができました。

すさみ 道の駅

すさみ 販売風景

 売ることができなかった商品は継続して販売していただけることになり、道の駅の皆さまには大変感謝しています。

【7日目】道の駅販売の振り返り

台風接近のため、当初の予定よりも1日早くすさみ町を出ることになりました。道の駅販売の振り返りでは、それぞれの様々な気づきや学びを出し合い、お互いに共有しました。

同じ体験をしても様々な視点での気づきがあり、さらに学びを深めることができました。

また、最後ということでみんなでお昼ご飯を作って食べました。その日がメンバーの1人の誕生日だったのですが、すさみ町の方がわざわざ隣の町からケーキを買ってきてくださいました。最後まで、協力してくださったすさみ町の皆さまには本当に感謝しています。

■学び

今回クラチャレで初めてすさみ町を訪れ、まず感じたのが、すさみ町の皆さんの温かさです。初日のバーベキューで、初対面の私たちに皆さんが気さくに話しかけてくれ、すぐになじむことができました。
2日目と3日目に経験した漁は私にとってとても過酷でした。漁に同行して、漁師さんの漁に対する熱意や技術を肌で感じることができ、尊敬しました。
漁だけでなく、道の駅の販売や町の方との対話、その他様々な経験を通して、いろいろなことを学ぶことができました。(早稲田大学1年 渡邊稜太)

一緒に参加した学生をはじめ、すさみ町で出会ったみなさんのこと、そしてすさみ町という場所を大好きになった1週間でした。
ケンケン漁という漁法を今回参加してはじめて知ったのですが、すさみ町の町長さんが私の出身地である千葉を含め岩手から長崎までこの漁法を伝え、各地でケンケン漁による鰹の漁が行われていること、すさみ町がレタスの発祥の地であることなど、実は身近なところにすさみ町が存在していたことに驚きました。朝5時から漁師さんと一緒にケンケン漁に出て、魚を釣り上げる作業は想像以上に力がいるもので、これを毎日朝早くからやっている漁師さんの姿は本当にかっこよかったです。すさみ町で過ごした7日間、ここには書ききれないくらい様々な素敵な出会いがありました。本当にありがとうございました!
(立命館大学3年 植草七海)

今回のクラチャレで学んだことは、”物事を俯瞰して見ることの重要性”です。活動の序盤では、町長さんのお話を聞いたりや漁業を体験したりと貴重な経験をさせていただいたのですが、自分の思い込みや固定観念からなかなか脱却することができず、主観的に物事を捉えていました。しかし、武蔵野美術大学生との合同ワークショップや地域の様々な人との関わりを通して、自分にはない思考やすさみ町の知らなかった現状を知り、次第に多角的で客観的な立場から考えられるようになりました。その結果、すさみ町の強みや弱み、どういった商品が売れるかなどを冷静に分析することができ、道の駅の販売では台風という悪条件の中、想定していたよりも多くの商品を売ることができました。
全体を通して、すさみ町で過ごした1週間は町役場の人達をはじめ、沢山の人達のおかげで価値あるものとなりました。今後は、この経験を忘れず活かしていきたいと思います。(青山学院大学3年 四元貴也)

私は今回のクラチャレにおいて、たくさんのことを知り、学びました。船に乗った時には、漁師さんの生活の過酷さ、狙った魚を獲ることの難しさ、1匹の魚にかかっている漁師さんの思いを知りました。ワークショップや意見交換会、発表では多角的視点の大切さや、「地方創生」という一言でくくられている物事の大きさ、その場に合った案を考えることの難しさを知り、道の駅での販売では物事がいかに思った通りに進まないかや、工夫を伝えること、思いを伝えることの大切さを知りました。これらのことは今回のクラチャレを通して思い知ったことで、今回の体験が無ければ学ぶことができませんでした。今回学んだことを胸に、日々の生活で自分の生活がどれだけの人々に支えられているのかを考え、感謝の念を忘れないようにしたいです。様々な方の優しさに支えられた7日間でした。ありがとうございました!(中京大学 2年 梶本彩葉)

今回のクラチャレに参加して、大きく2つ良かったと思うことがあります。
1つは、同じ課題をひたすら考え続けるという経験をしたことです。今回初めて水産業の課題についていろんな方からお話を聞いたり、実際に船に乗って漁を体験して、この課題をなんとかしないとと心から思い、実際にクラチャレ開催中は常に頭を働かせていました。一つの問題を解決するためにこれほどまで考える機会はこれまでなかったので、とても貴重な経験でした。
2つ目は、すさみ町の多くの素敵な社会人と出会えたことです。今回いろんな方に出会い、お話を聞いて、仕事ややっていることはそれぞれ違うけど、皆さんすさみ愛に溢れていて、なんとかしてもっとすさみ町をよくしたいと思っていることにとても感動しました。すさみ町の人たちは、本当に素敵な方ばかりで、こんなに素敵な人で溢れている町はなかなかないのではないかとも思いました。漁の日は朝が早かったり、中間発表会では悔しい思いもしましたが、なかなかこのような機会はなかったのでとてもいい経験となりました。
(立教大学4年 川原紀春) 

■事後報告会での提案

▼現地で感じた、すさみ町の漁業の課題

今回漁の現場を体験する中で、「未利用魚の市場価値を高めること」が解決すべき課題の一つであると考えました。
ここまでにも何回も出てきた「未利用魚」ですが、定義は以下の通りです。

「未利用魚」とは、形が悪かったり傷がついていたり、出荷するほど十分な水揚げ量がない等の理由だけで、価値がつかず市場に出回らないもったいない魚のことです

今回出会った「オキザワラ」や「シイラ」などは、獲れる量が少ない、美味しくないなどの理由で未利用魚とされ、獲れても捨てられてしまうといった現状がありました。漁師さんにとってもせっかく獲っても収入にならない、また魚にとっても命を奪われたのに食べられることもなく捨てられてしまうという負の現状があり、解決すべき課題であると考えました。 

▼私たちが提案する解決案

上記の課題から私たちが提案するのは、「未利用魚のミールキット」です。

現在フードロスとなっている未利用魚を加工して、ミールキットとして販売し、すさみ町の新たな名産品として売り出していくことを考えました。
これらは、4日目に100本のスプーンのシェフにふるまっていただいた料理から発想を得て提案しました。

また、ミールキットにはすさみ町の魅力を紹介するパンフレットや、すさみ町もしくはKuradashiのサイトで使えるクーポンなど、すさみ町をさらに知ってもらう特典をつけることを考えました。

■感想

ここまで読んでいただいて「未利用魚」が今回のクラチャレのキーワードの一つであったことはお分かりいただけたかと思います。実際にシェフに調理していただき試食してみると、先述した通り大きな可能性を感じました。また、漁師さんの高齢化やすさみ町の関係人口を増やすことも大きな課題だと学びました。今回のクラチャレはそれらの課題に対して、常に頭を働かせ、いろんな人からお話を聞き、トライアンドエラーを繰り返した1週間でした。この経験はとても貴重で、参加してよかったと心から思います。これからの人生の糧となる、この貴重な体験ができたのも、今回すさみ町でのクラチャレを開催するにあたってご尽力くださった、すさみ町の方々や積水ハウスの方々、またクラダシの皆さんのおかげだと思います。ありがとうございました!

※1 すさみ町とクラダシの連携について

和歌山県すさみ町、積水ハウス株式会社、株式会社クラダシの3者は、「すさみ町における食品ロス削減及び特産品のPRに向けた連携協定書」を2022年7月12日に締結しました。

【すさみ町とクラダシの包括連携協定についてこちら

 

くらだしマガジン編集部

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