コノスルワインは環境にも配慮。ワイン造りにおける、有機農法と再生可能エネルギーの導入について

コノスルワインは環境にも配慮。ワイン造りにおける、有機農法と再生可能エネルギーの導入について

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チリのセントラルヴァレーに広がる景観は「見渡す限り一面」のブドウ畑で、干拓で新田開発された日本の田んぼと似ています。パンアメリカン・ハイウェイを走る車からの眺めは、はるか遠くに霞んで見える山裾まで、みんなブドウの樹列で覆われています。四方八方十六方、地平線の彼方までブドウの樹が並んでいる風景は、ずっと昔から続いている風景ではありません。

カチカチになってしまった畑

ブドウ栽培は昔ながらの有機農法から、大量の収穫を実現するために合成肥料と農薬を使った慣行農法に切り替わりました。この農法のおかげで1960年代以降、世界中のブドウの生産量が飛躍的に増えたのは、チリワインも同様です。


ところが21世紀を目前にして、チリのブドウ畑には壮大できれいな景観に不都合が生まれます。ブドウ畑の土がカチカチに硬くなり、樹の周りには虫も蝶もいなくなった。ブドウ樹には葉が茂りすぎるという問題が生じました。土と樹に関することだけでなく、畑仕事をする人からも頭痛や肌のかゆみなどの不調を訴える者も出てくる始末。これは、土に定期的に合成肥料を与え、除菌剤や除草剤など農薬を使って樹を防除する農法が原因でした。

そこで、有機肥料に戻して土中の微生物を復活させ、フカフカの土を取り戻そうという動きが始まります。


1990年代後半になると、チリのブドウ畑のあちこちで「インテグレーテッド農法」という新しい言葉を耳にするようになりました。すぐには有機農法に戻せないので、有機と慣行農法を都合よく「統合」した方法を採用して徐々に有機農法に戻す、というものです。

コノスルはいちはやくこの統合農法を実践し、そこから次々と有機栽培に転換して、そのブドウで造ったオーガニックワインを世界中に提供してきました。


有機農法によるブドウ畑に留まらない生態系維持の取り組み

コノスルのブドウ畑では、殺虫、殺菌、除草のための薬剤散布をやめ、畝間に草花を生やし、合成肥料から堆肥へと施肥の仕方を変える取り組みが着々と進行。ブドウの収穫が終わったら畑にたくさんのガチョウを放し、彼らに害虫駆除の仕事をさせました。そうして、土の中の微生物が戻り、畝間に咲く花を見つけて蝶や虫が帰ってき、ブドウ樹を取り巻く生き物の繋がりが回復して、これらがうまく循環するようになったのです。


ブドウ畑のある風土の特徴を維持するためには、さまざまな虫や小動物など土地固有の野生生物が里山とブドウ畑を往来できる通路を確保する必要があります。さらに、ブドウの木の周りの生き物の好循環を、近くの里山や小川と結び付けることで、地域全体の生態系を守ることができます。ブドウ畑をブドウ樹の単一栽培ではなく多様な植物で構成された生態系に戻すことで、自然に害虫が除かれ、ブドウが成長するための栄養サイクルが完全なものになる。これは、ブドウ栽培に対する生態系の公益的機能といわれるものです。


チリ大学・生態学生物多様性研究所は、「里山とそれに近接するブドウ畑のそれぞれに生息する微生物を調べると、菌類とバクテリアの80%は同じものでした。ところがブドウ畑が里山から遠ざかるにつれて、それぞれの菌類の群集が異なっていくのです。つまり微生物にも土地固有の風土性があり、里山とそれに近接する耕作地はひとつの生態系にあるのです」と、言っています。

また、この研究所の調べでは、「ブドウ畑の吸収できる二酸化炭素量は約5トン/haだが、森林のそれは24トン/haにものぼる」という。つまり、ブドウ樹の単作より多様な植物を栽培した方が全体的には二酸化炭素量を低減し、地球温暖化防止にも繋がるというわけです。

干ばつの危機

過去20年、チリ中央部では新しいブドウ畑の開拓が急激に進みましたが、その多くは沿岸山地の傾斜地を拓いたものです。なぜここに目を付けたかと云うと、

①寒流から吹き込む海風が冷たくて気候が涼しく保たれていること

②毎朝のように霧は立ち込めるが雨は冬に少し降るだけで夏は乾燥していること

③風化した砂礫に覆われた土地で痩せた土壌であること

いずれも上質のブドウを作るための必須条件です。


ではなぜチリ人はそんなブドウの理想郷にこれまで畑を拓かなかったのでしょう。それはここには近くに河川がなく、乾燥した土地を潤すための水が得られなかったから。チリのブドウ樹は専ら大きな河川のそばか南部の湿潤地に植えられていました。

ところが21世紀を前にして、灌漑水を確保するための大掛かりなプロジェクトが始まりました。遥か遠くの河川からパイプラインを通じて水を引いたり、深い井戸を掘って地下水を汲み上げたり。さらには電柱を立てて畑まで電線を引き、ポンプのための電力を供給しました。こうして水のない荒蕪地に新しいブドウ畑ができあがったのです。コノスルのサン・アントニオの畑、カンポ・リンドもそうやってできたもので、井戸を掘り地中深くから水を汲み上げて灌漑に充てています。


ところが、長引く干ばつの影響でチリ中央部は慢性的な水不足に陥っています。カンポ・リンドも例に漏れず、ここにきて初めの井戸の地下水脈が干上がってしまいました。より深い2本目を掘ったがそこからも十分な水が汲み上げられず、いまはさらに20メートル深い3本目の井戸に頼っている状況です。


ソーラーパネルで節水

そういう厳しい環境下で、化石燃料由来の電力使用削減という大命題が突きつけられています。コノスルの解決策は、点滴潅水の絶対量を削減するとともに、ソーラーパネルを設置して太陽光エネルギーをポンプとパイプの動力に充てることでした。

井戸から汲み上げた地下水はいったん貯水池に溜める。これで地下水の無駄使いを省く。さらにその貯水池の水面上にソーラーパネルを浮かべて太陽光エネルギーを確保するのがコノスルの仕組みです。貯水池の水面上に設置されたソーラーパネルは、太陽光を捕まえて電気に換えるだけでなく、貯水池の水分の蒸発を防ぐ役割も果たしてくれる、まさに一石二鳥なのです。

テクノロジーの活用と自然への回帰

様々な課題がありつつも、ソーラーパネルでの電力発電や節水の工夫、環境の変化に対応した解決手段を見つけて実施しているコノスル。

ブドウ樹の畝間に在来の草花を植えて虫や蝶を集め、堆肥を使用して地中の微生物をどんどん増やす。そして、ブドウ畑にはブドウ樹だけでなくさまざまな在来種の植物を植え、そこに野生生物の通路を作って里山へと繋げる。

ブドウ畑を含む所有地全体の生物多様性を高めることは、ブドウ栽培の持続可能性を高めるだけでなく、ひいては気候変動の原因を軽減することに役立つのです。

 

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くらだしマガジン編集部

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